先代から80年余住んできた三軒茶屋の家を離れ、ここ若林の仮住まいのアパートへ引っ越して来たのは、丁度1年前のことです。

アパートは狭隘な間取りで、以前よりあった家財・荷物が、とてもとても収容しきれません。


とにかく捨てました。

タンス、ベット、ピアノ、これも、あれも、・・・・です。

大切にしていた道具類、着物など、思い切って処分しました。


そうしなければ、私達夫婦が食事をとることも、床をとることも出来ません。

そうです・・・・。

スペースの利益を、先ずは、確保しなければなりませんね。


 勤め抜いた国家公務員の職を退官したのは、38年前のことです。

いよいよ、自由な時間の到来です。

当初、在職中では、とても叶わぬことを、「あれもしたい、これもしたい」と欲張り、いろいろやりました。


あっという間に,数年の年月が経ちました。

ところが、さしたるものも、成果も、得ていないことに気付きます。

このままでいいものか。

私の残余の人生に、正直、暗く閉じられてゆく予感さえ、覚えます。

空しく感ぜられます・・・・・・。

なんとかして、それを振り払いたい。


「人は何かを失えば、何かを得られる。」

「多くのものを、両手でかかえて生まれ育った者は、それらを落とさぬようにするだけで、あらたなものを、得ることはできない。」


あと10年、15年の人生を、気概をもって、やり抜き、走り切るものはないか。

私は、いろいろあたり、探し、考えます。

とうとう、一つの道に辿り着きました。

それは、行政書士の道です。


一昨年、行政書士登録をしました。

街の法律家として、暮らしの困りごとで、お役に立ちたい。

少しでも、皆さん方に貢献したい。


この両手は、何かを掴むことが、出来るかも知れない。

まだ広く、広く、空いています。

貴重な残り人生を、行政書士にかけます。

私は、おのれの両手を見つめます・・・・・・・。


     行政書士  平 野 達 夫