任意後見制度と法定後見制度とを比較し、その相互の関係を見てみましょう。
① 任意後見人は、法定後見人の場合と異なり、「代理権」のみを有していて、「同意」、「取消権」はありません。
悪徳商法などによる被害を受けた場合には、取消、無効の事由を自らが主張し立証して、救済を受けることになります。
② 法定後見では、成年後見人が被成年後見人の居住用の不動産などを処分するには、家庭裁判所の許可を必要とします。
本人保護の対策が取られているわけです。
一方任意後見にはこれはありません。
任意後見人が居住用不動産などの処分や、一定額以上の銀行取引を行うには、「任意後見監督人」の同意を要する旨の特約を結んでおき、登記することができます。
③ 法定後見は原則として、家庭裁判所が後見人を監督し、必要認めたときにのみ、後見監督人を選任いたします。
多くの場合は、任意後見におけるような後見監督人に報酬を支払うケースは少ないといえます。
④ 法定後見では、後見人を家庭裁判所が選任します。
任意後見では、本人自身が「任意後見受任者」を選任することになります。
⑤ 法定後見における「補助」、「保佐」、「後見」は、判断能力の低下が進行しても、当然に移行するのではありません。
新たにその審判が必要となります。
一方任意後見では、審判はなく、移行する形が取られます。
⑥ ここで後見人に支払う「報酬の額」について考えてみましょう。
任意後見の場合は、本人につき情報が不十分なケースも多く、どちらかといえば高額になりがちであります。
一方法定後見の場合は、家庭裁判所が後見人等の職務の量や、難しさ、財産の額などによって、報酬を総合的に判断します。
従がって、比較的に相応しいものとなるといえます。
⑦ 法定後見では、審判開始申請には、「鑑定」を必要とします。
ただし補助人は、「診断書」でよいものです。
任意後見では、同様に診断書で足ります。
尚、後見開始に要する鑑定費用は、5万ないし15万円位かかる例が多いようです。
東京家庭裁判所では、原則として10万円を予納する取扱いのようです。
ここ数年、成年後見全体で鑑定を実施したものは、3、4割程のようです。