先日、後見補助人が入所する特養ホームを訪れた際、ケア相談員の方から、今年3月以降の施設利用費等の支払が、滞っている旨の話を受けました。

毎月20万円余の施設利用費のほかに、衣類等の日用品の購入や、時には病院などの診療・医療費もかかるとのことです。

それらを入れると、かなりの額になるようです。

ご本人の金融機関の通帳は施設で預かり、その都度必要に応じて係りの方が、最寄の銀行に差し引きにまいります。

前任の後見補助人の方が、年に何回かに分け相当額を別の銀行から振込んでいたのです。

病に倒れて入退院を繰り返す中、それも叶わなかったのでしょう。

さぞ大儀なことであったと思います。

現在のご本人の通帳には、残金が僅かです。

 ケア相談員の方からは、「止むを得ない事情がありますが、施設としては、3か月の未払いは困ります」と告げられました。

「いやぁ、それはないでしょう・・・・・・」と私は、言ってしまいます。

厳しいと思いませんか・・・・。

 ところで一週間ほど前に亡くなられた前任の補助人の娘さんが、書類引継にのため私方に来られました。

その折、「特養ホームへの支払のため取引の銀行に行き、「母が亡くなったので、自分が代わって振込に来ました。」と言ったら、銀行から「新たな後見補助人が裁判所で選任され、審判の確定証明書付きの登記事項証明書を持参いただかないと、引き出し、振り込みは一切出来ません。」と言われました。どうしましょうか。」

私は、一瞬「えっ、どうして、そんなこと言ってしまったの・・・・・」

それ以上言葉は、出ませんでした。

 翌日早朝、私は開店間もないその取引銀行にまいりました。

京王線駅から程近い、大手都市銀行です。

私は、実際のところどうなるものかと、少なからず昂ぶる気持を押さえつつ、店内に案内され席につきます。

私は、係りの方に詳しく今までの経緯を話します。

暫くして、直属の上司です。

続いて、その部署の一番と思しめき責任者のお出ましです。

私は、懸命に説諭にあたりますが、・・・・どうして、どうして・・・、中々です。

難しいなぁ~、" どうして娘さんは、「母が亡くなってしまった」なんて言ってしまったの、当たりまえじゃあないの・・・・・ "

一度閉じた銀行口座を開くのが、こんなに大変なのか・・・・・・。

そして支店長さんが、現われました。

キリリトした清楚なスタイルをしておられます。

「支店長の○○です。」と言って、名刺を出されます。

結構、お若くも見えます。

終始、私の話を落ち着き、聞いておられます。

そして時折、私のもの申す事にうなずかれます。

 私は、成年後見制度の有り様、その趣旨、運用などをとくとくとお話したと記憶します。

先ずは、「被後見人本人の利益・幸せを第一に考えることです。そこに、今この時に共に生きる私達は、公平にその利益を享受し、相応しい成年後見の運用につとめるべきです。それが私達に課せられた使命ではないでしょうか。」とお話したと思います。

でも実のところ、私はよく覚えていません。

・・・・すると、どうでしょうか。

支店長さんは、口を開きます。

「はい、あなた様の言われることは、良く理解できます。」

「私が、明日ご本人が入所する特養ホームに伺い、ご本人確認をいたします。」

「私の方から、特養のケア相談員の方に連絡しておきましょう。」とのお言葉をいただいたんです。

「あぁ、良かった。ありがとうございます。ありがとうございます。」

 はるかに、2時間以上は経ったでしょうか。

支店を出る頃には、既にお昼近くになっておりました。

とうに、疲れました・・・・・・・・。

 翌日の午前11時過ぎ、支店長さんより電話がありました。

「ただ今、特養ホームでご本人確認をいたしました。ご本人の施設での日々の生活など、拝見しました。よく分りました。」

「支店の方にお越し頂ければ、いつでもご要望の手続を致します。ご心配なく・・・・・・・。」との快いお話でした。

私は、「お世話になります。ありがとうございました。宜しくお願い致します。」

 週明けの月曜日、私は、妻を同道して、開店間もない支店を訪れます。

支店長さんと担当の課長さんとの面談後、速やかな口座からの手続を終えました。

「この度は、先生から成年後見制度について、いろいろ教えて頂きました。」

「種々の決まりはありますが、その運用は難しいものがありますね。綺麗な恵まれた特養ホームの施設におられるご本人は、とても幸せです。これからも大切にして上げて下さい。」と、支店長さんは仰られます。

私は、それはもう、とてもとても嬉しくなってしまいます。

「ありがとうございます。・・・・・・・・」

何だか、"この 銀行 "が、すっかり好きになってしまいました。

 私の持っている預金口座の全て・・・・、いやぁ、たいした金額にはなりませんが・・・・・。

いいですよ、こちらの銀行さんに変えましょうか・・・・・。