昔から聞いていて不思議だなと思う言葉がある。

「働き甲斐のある職場」とか「成長できる職場」ってやつだ。

 

これを耳にするたびに働き甲斐って誰かに用意してもらうものなのかなと思ってしまう。

成長って何をもって成長というのだろうと。どんなイメージをもって成長って言っているのだろう。この辺を学生に突っ込んで聞いてみても即答できる人はほぼいない。

 

本来何か行動をしている時は楽しいはずなんだよ。

歩くことだって、文字を書くことだって、考えることだって楽しいことでしょう。

 

どんな人でもこれらが楽しかった時を思い出すことができるでしょう。そんなに昔を振り返らなくても、朝の散歩や、夕日の海辺を歩くことは楽しいと感じるだろう。

 

でも同時にそうじゃない時もある。同じ行為でも「楽しい!」と思えない時が私たちにはたしかにある。

 

ではそれは一体どんな時なのだろうか。

ここに想いを巡らせないと話はキャリアラダーの方向に向かってしまう。

 

自分はどんな時に楽しくて、どんな時はそうじゃないのかを丁寧にみておかないと誰かが作ったキャリアのレールに乗ることになる。プランに従って進むことを「成長」と勘違いしてしまう。

 

自分にできることが増えていくことはもちろん成長だが、それと同時に自分で考えることや新しいものを生み出す「創造性」を引き出していくこともとても大切な要素なのだ。

 

人の指示や誰かが作った書式やフォーマットをコピーしていると、作業は楽になるが考える力は育たない。

 

SNSに自分で考えて行動したことを写真と文章にしてアップするのと同じように仕事もでできたら、創造性を発揮しながら働けるだろう。

 

今企業はどこもやらされ感ではなくて自ら動く「自主性」をもった人を育てようとしている。自分で考え行動・実行し、成果を上げるいわゆる「自走モデル」を作ることが課題なのだ。

 

だから魅力的なキャリアプランがあれば人がいない中で採用ができて、さらに考えたプラン通り成長すると考えているのだ。

 

だけどね、キャリアプランなんてものは考えなくても普通に魅力的で輝いている人が職場にいればそれが一番のモデルになるのよ。

 

みんなでどのようにプロジェクトに関わって、どう達成していったのかが魅力的であれば、見る人が勝手に自分の働く未来を想像していく。


だけど、いくらドラマチックで魅力的でもそれを既存のエクセルの報告フォーマットを用いて共有すると一気に味気ないものに変わる。

 

だからキャリアラダーを描くよりも、どう面白がってチームで目的を達成していくのかをみんなで時間を割き、頭をひねった方が多くの恵みがある。共有の仕方もテクノロジーがどのように絡んでくるかは未定だが、SNS的なプラットフォームで報告することで全員が共有できるような仕組みへと変化していくような気がしている。

 

YouTuberの様に個人で稼いでいく方向が伸びれば、反対に組織はもっともっとチーム作りに熱を上げる。軍隊式のトップダウンで管理していた方向から、どうチームを作っていくのかというチームビルド論が盛んになるだろう。

 

そこには縦の関係ではなく横の関係が求められる。オーケストラの様に個人の価値観はそれぞれ違うけれど全体としては調和して、一つのハーモニーになって進んでいくやり方が求められていくのだ。

 

そうやって、役割の違う小さな「さざれ石」たちが大きな「巌」になるように一丸となって一人では難しかった願いを叶えていく。そういうチームが求められるだろう。

 

今までは一つの大きな哲学やビジョンで人をまとめていたが、これからはそれぞれのチームやプロジェクトごとにもショートスローガンが多様に用いられながら、チームの世界観を形成していくような気がしている。

 

世界観が確立され、チームごとの持ち味が出てくると所属している人たちは誇りを持つ。そして、誇りを持つまでの過程をも共有していくようになる。プロセス自体がショー化され、ショー自体がチームビルドの要素になっていくだろう。

 

そしてそれを外からみた人が勝手に働き甲斐や成長を感じとっていく、そんな風に組織の在り方がここ5年ぐらいで変わっていく気がしてならない。

 

もう無理やり服従させ、従わせ、支配し、トップに報告するやり方のごり押しでは企業は生き残っていけないだろう。そして強いコンセプトでザルすくい的に共感を得る時代も終わった。みんながそれぞれに在りたい未来を描き、共通する部分で繋がり、ズレている部分はお互いを尊重して、話し合い寄り添いながら、どうしたらみんなが良くなるのか新たなアイディアを模索していく方向に舵を切るはずだ。

 

そしてそれをSNS的に共有し、困った時はそこに質問を投げて置けば知っている人、もしくはAIが答えてくれるような未来がみえている。

 

物が行き届いた時代になり、社会課題だけが沢山残ってしまっている現代での新たなビジネスを考えていく際に、どれだけ多くの人がハッピーになるのかという視点が社会を良い方向に導いていくだろう。それは三方良しどころか全方位に向けて循環型を作っていくこととなる。

 

それをどのようにやるのかというと「楽に楽しく」である。この流れに乗っていった方が理想を実現するスピードは速まる。反対にこの方向からはずれたら淘汰されていく。

 

私たちはあくまで自然(じねん)であって、自ずから然るべく方向にいく。そして目に見えるモノ、目に見えないモノを含めたこの世に存在する全てのものは、私たちを本来の姿に立ち返らせようと絶え間なく働きかけている。

 

仏教では存在する全ての原始物質は同じであり、すべてに仏性が宿っているとしている。ならば私たち一人ひとりの中にある仏性が共鳴共振するように相手と話し、全ての人類にスイッチが押されるようなアイディアを世に放つ。そのためのコミュニケートをすれば必ずその組織には加護があろう。

 

あなたにとっての働き甲斐とはなにかね。