SNSに投稿したら、久しぶりに連絡をくれた人たちがいた。
何年も前に数日しか会ったことない人も連絡をくれて、「あぁ、覚えていてくれるんだなぁ」と嬉しい気持ちになった。
自分でいうのもなんだが、「私は本当に何者でもない」。こんな何者でもない自分にコメントくれるなんてありがたいなと思う。
何者でもないというのは、実際そうなのだが、私はなんというか自分のことを紹介するのが苦手なのだ。
始めて会う人は当然だが「何やっている人ですか?」と聞いてくる。私はこの質問に対して今まで一度も上手く答えられたことがない。
「整体やってます」とか「チャネリングやってます」とか「風水みてます」とか「コーチングしてます」とか、色々答えていた時期もあったけど、言った瞬間からなんかスッキリしないというか、どうにも歯切れが悪い。
「最近は家業を手伝っています」と答えるのだが、言われた方はポカ~ンとしている。その後家業の説明をしても盛り上がった試しがない。
反対に他の人で上手く言えているな~と思ったのは、「私は先祖代々から続く刀鍛冶です」だった。
良い自己紹介だなと思った。聞いた瞬間から質問がやまないじゃないか。
他にも特殊能力を持っている人や、一芸をその場で見せれる音楽の人やマジシャンなんかは自己紹介できているなーと思った。
じゃあ整体やチャネリングは特殊能力じゃないのかと言われたらそうではない。そうではないがそのノリで無料でやってと言われるのもなんだか癪だ。
私の友人で、ヤンキー上がりで美容師になり、自分の店を持った奴がいるが、彼の自己紹介には熱量があるのだ。自分を物語の主人公かのように加速度を上げながら話すその姿を横目でみながら、歯ぎしりが止まらなかった。これはもう特殊能力うんぬんじゃなく、私という個人の問題な気がしてくる。
この「何やってる人ですか?」という質問の何がむず痒いかというと、もう一人の自分が俯瞰で見てくる感じがするのだ。
例えば、「整体やっています」と答えた時に、俺って整体だけやってる人なのか?と極めて冷静にこちらをみてくる。
じゃあ整体やっている人全員が私なのかといったらそうではないじゃないか。
この答えはまるで「サラリーマンです」と答えているような感じがするのだ。
「普段何やっている人ですか?」に対して「サラリーマンです」は答えとしては不十分というか、伝わるかねこの感じ。
で、この状況をみかねて後輩がつけてくれた肩書が「旅人」だった。
これは良い。
「旅人です」は魔法の言葉だった。
皆まで言うなという「聞いたら無粋感」が出るのだ。
「何をしている人ですか?」の質問の背後には大きく2種類の問いがある。
一つは「何をして稼いでいますか?」であり、職業に対する問いだ。
そしてもう一つが「どんなビジョンをもって生きていますか?」だ。こちらは熱量をみられる。今楽しんで生きてますか?というキラークエスチョンが隠れているのだ。
稼ぎ方というのは人を安心させるし、新しい稼ぎ方であれば興味をそそるだろう。
そしてビジョンに対しては生きる姿勢みたいなものを問われていてなんだかキツイ。
だが、この二つのクエスチョンに対して「旅人です」は絶妙に答えないという選択ができるのだ。
なんというか「いま探しています」という感じがでるというかね。
なんなら「探すことこそ人生です」みたいな雰囲気もでる。うっすら旅人のマントとハットとブーツ、そして無精髭がみえる気がする。きっとこれを答えている時は遠くを見ているだろう。そんな感じが「旅人です」にはあるのだ。
だがこれが通用するのもきっと30代までだろう。
だからこれからは「茶人です」と答えようと思っている。
茶人もまたそんな雰囲気がある。
ようは、「何している人ですか」って俺に聞いてくんなって話だ。