あーやです。
本日はエッセイです。



平原「あやちゃん、何ボーだっけ」
望海「あーや、イザボーね(笑)」

そんな会話をしてから
時はまったく経っていないような気がする。

渡辺ミキさんに誘っていただき
観劇する機会を得た。

舞台に蘇る悲劇と愛の狭間で
イザボーをはじめ、歴史上の人物たちが
2024年の、この日本で
もう一度、心臓の鼓動を許されたようだった。

全力で頭をフル回転させ
セリフや歌詞を聴き逃しまいと休憩を挟み3時間。

客席で座って観ていただけなのに
感情移入型の私は1幕が終わっただけでも
「お、お水ください」である。

フランスの歴史を丁寧に紐解きながらも
堂々たるフィクションが飛び出すので
状況を把握するまでに少し時間がかかったが

「Don't think! Feel.」と言われている気がして
その波に乗ってしまえばいいのかもしれない。

それは、1幕の最後あたりでイザボーが
女性を見下してくる男性に対し
オラオラし始めるのが合図だった。

女だからとなめて
イジワルをしてくる人がいるかぎり
2024年の日本にも
イザボーは生まれてしまうのだ。
(オラオラ度合いの話)
何を隠そう私、あやボーもそのひとりであるが
時に女性は、なんとも言えない
悔しい瞬間を経験することがある。


「不思議だな
ずっと会いたかったような気がする」
このセリフにもあるように

私たちは不確かな確信に突き動かされる。
最後は、この人に出会わなければよかったと
悔やむような出会いであったとしても
この人に出会ったからこそ
出会うことが出来た人物もいるわけで
良い出会いだったか、そうでないかは
自分次第であり、そう問題ではない。

出会いといえば
今回のキャストには共演者が多く
私の10年前はまったく想像できなかったことだ。

何を隠そう、平原綾香は
今年でミュージカルデビュー10周年。
作品ごとに素晴らしい人々に出会った。

イザボーの赤に混じって、今回のキャストには
ムーランルージュの香りがプンプンするし
「北斗の拳」のジュウザの魂が宿るふたりが
仲良く並んで踊るシーンは
私の中に宿っているユリアの魂が
いっそう微笑んでいるようにみえた。


「今あなたは幸せ?」
イザボーの子供時代が
イザボー自身に何度も何度も問いかけるセリフだ。

私はこの人生で、いままで一度も
自分に問いかけたことがない質問だったので
強烈な違和感を覚えた。

それは多分、自分が幸せであることよりも
もっと幸せになれる方法を
知っているからなのかもしれない。

そこにイザボーが気づくまでには
かなりの時間がかかった。

争いの先に幸せはない、ということも。

「すべきである」「でなければならない」
そんなものは、実はこの世に存在しない。

自分で決まり事を作り、自らを追い詰めていく。
そうやって実像のない自分を
無理やりかたどっていく事でしか
私たちは、生きている実感と達成感を
得られないのだろうか。

最後の、我が子とのシーンで
本当の幸せと本当の愛を知ってくれたらいいと
心から願った。

たったひとつのハグで、すべてが変わるように
言葉を話すことを選んでしまった僕らは
どんな動物よりも無口だ。

そう、私たちは生きている限り
幸せになりたいのだろう。
たとえ、人々の悲しみを願う悪魔であろうと。

「日本にオリジナルミュージカルを」
そう声を掲げ、長年取り組んでいる人たちがいる。
今回の「イザボー」もそのひとつだ。

新作ミュージカルに挑む制作陣や俳優たちの
才能とたゆまぬミュージカルへの愛が
今回の作品でも伝わってくる。

「イザボー」東京公演は昨日で幕を閉じた。
大阪公演も、どうか
いっぱい出てくる階段に気をつけて
安全にがんばってください。

愛する素晴らしいキャストのみなさん
ミュージシャン、スタッフ陣に
心からのエールを。


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MOJOプロジェクト
-Musicals of Japan Origin project-
ミュージカル『イザボー』

【キャスト】
イザボー:望海風斗
シャルル七世:甲斐翔真
シャルル六世:上原理生
ジャン:中河内雅貴
ルイ:上川一哉
ヨランド:那須凜
フィリップ:石井一孝

大森未来衣(イザベル)、伯鞘麗名(ヴァレンチーナ)、石井咲、加賀谷真聡、川崎愛香里、齋藤千夏、佐々木誠、高木裕和、堂雪絵、中嶋紗希、宮河愛一郎、安井聡、ユーリック武蔵

スウィング
井上望、齋藤信吾、高倉理子

作・演出:末満健一
音楽:和田俊輔
主催・企画・製作:ワタナベエンターテインメント
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