あーやです。



友人 Michael K Leeさんが出演している

ミュージカル『DEVIL』の千穐楽を観に行った。


天才ミュージシャンたちによるサポートも魅力で
ドラム 則竹裕之さん、ベース 土井孝幸さんは
私の今のコンサートツアーのバンドメンバーでもある。


この作品のことを、何も知らずに観た。
ミュージカル『DEVIL』は
ゲーテが60年もの歳月をかけて
書き上げた大作『ファウスト』がベースに
なっているそう。


何も知らずに観ていたけど
観終わった後に勉強したら
とっても面白くなってきたので
気づきと共に、エッセイ風に
感想を残しておこうと思う。
時間があるときにでも、読んでね。


「光と暗闇は本来一つの存在、X−WhiteとX-Black」

ミュージカル『DEVIL』はこんなお話。
ある日、X-Black(悪魔メフィスト)は
X−White(神様)に語りかける。
「人間はあなたから与えられた理性を
ろくな事に使ってないじゃないですか」と。

するとX−White(神様)は
「今はまだ混乱した状態で生きているが
いずれは正しい道へと導いてやるつもりである」と
“常に向上の努力を成す者”の人間代表として
ファウスト博士という人を挙げた。

X-Black(悪魔メフィスト)はそれを面白がり
ファウスト博士の魂を
悪の道へと引きずり込めるかどうかの賭けを持ちかける。

X−White(神様)は
「人間は努力するかぎり迷うもの」と答え
その賭けに乗り、物語は始まる。


観ながら、ずっと不思議に思っていた。

なぜなら、物語の中では
X-Black(悪魔メフィスト)が圧倒的に強く
X−White(神様)は、それを止めようともせず
人間ファウスト博士は
どんどん追い込まれていくからだ。


なぜ好き勝手にさせちゃうの?
賭けとはいえ、なぜ助けてあげないのだろう、と。

どんどん追い込まれていく人間を
X−White(神様)はじっと見つめるだけなのだ。


しかし、ずっと気になっていたことがあった。
X−White(神様)を演じるマイケルさんの視線だ。

初めて登場したときから
ずっと同じ眼差しで
ただじっと、人間たちをみている。

後半にかけて、さらにその視線や
人間をみる眼差しが際立っていく。

そうか、X−White(神様)は
いつだって、みているのだ。

いつも見えるところにいるはずなのに
みようとしないのは“人間”だったのだ。

X−White(神様)と目が合うのは
ファウスト博士の奥さんのグレッチェンだけで
博士はX-Black(悪魔メフィスト)しか見えていないのだ。


生きていると、思うことがある。
母に昔から言われていることで
ネガティブに生きるのは簡単だ、と。

不機嫌にならず、明るい心を選ぶこと。

そう、人間は
簡単に闇に行けるものだ。
だって、その方が楽だから。

X-Black(悪魔メフィスト)は
好きな時に現れ、気まぐれに傷を広げる。
ちょっかいを出すのが得意だからこそ
人間はそこに気を取られ、惑わされるのだ。
いつでもそばにいるX−White(神様)の存在を
すっかりと忘れて。


もうひとつ疑問だったのがタイトルだ。
なぜ、タイトルが “デビル”なのか?

答えは全く知らないけれど
私が思ったのは、このデビルは
小説家 五木寛之さんが教えてくれた
“ふさぎの虫”のことじゃないかと思った。

“ふさぎの虫”とは
人間の魂の中には、一匹の『虫』が居て
その名前は『ふさぎの虫』といい
普段はおとなしくしているけれど
何かのときにちくっと心を噛むのだ。

すると毒液のような黒いインクが広がるように
心の中は『暗愁』に満たされてしまう。

ちなみにロシアでは、それを
“トスカ”というそうで
翻訳した二葉亭四迷が『ふさぎの虫』と訳したそうだ。


デビルは
X-Black(悪魔メフィスト)ではない。

デビルは、きっと
私たち人間が生まれながらにして
心の深いところに宿している「愁い」なのだ。


最後、X−White(神様)は
X-Black(悪魔メフィスト)の胸に手を当てる。

X-Black(悪魔メフィスト)は
初めてのぬくもりをもらったかのように
ハッとして消えていく。

カーテンコールでは
お互いがお互いにひざまずき、抱きしめあった。

考えさせられる
すごいミュージカルだった。

自分から目を合わせにいけば良いのだ。
自分の進みたい方へ。

眩しいほどの光が当たれば
必ず深い闇ができるように

光と闇はいつもひとつだ。


ミュージカル『DEVIL』 
X-White:中川晃教/マイケル・K・リー(Wキャスト)
X-Black:ハン・ジサン/イ・チュンジュ(Wキャスト)
グレッチェン:AKANE LIV
ジョン・ファウスト:大山真志/東山光明/チェ・ミヌ(トリプルキャスト)

Singer:山野靖博、石川新太、伊藤広祥、ラリソン彩華、町屋美咲、橘未佐子
Swing:丸山真矢、久保佳那子、富田明里

※大山真志、東山光明は、ジョン・ファウスト出演回ではない回にSpecial Singerとして交互出演
※チェ・ミヌはジョン・ファウスト役以外にもX-BlackのSwingとして出演

【musician】
Keyboard conductor中原裕章
Keyboard松本かよ
Drums則竹裕之
Bass土井孝幸
Guitar佐藤誠/伏見蛍
Violin.1 桐山なぎさ/入江茜
Violin.2 岩戸有紀子/常見千絵
Viola渡部安見子/石田浩子
Cello増本麻理/遠藤益民


訳詞・上演台本:石丸さち子
演出:荻田浩一
音楽監督:島健
美術:石原敬
照明:柏倉淳一
音響:小林宏和
映像:大鹿奈穂
ヘアメイク:馮啓孝
衣裳:木鋪ミヤコ(doldol dolani)
衣裳製作:大屋博美(doldol dolani)
音楽監督補・歌唱指導:福井小百合
振付:塩野拓矢(梅棒)
演出助手・振付助手:富田彩
舞台監督:八木智

もう片方のキャスト公演も観たかった!!!!!