「平原綾香 アコースティックライブ
with 平原まこと」

今回、このコンサートを開催するにあたり
たくさんの方にご尽力いただきました。
父が出演出来なくなり
とても申し訳ない気持ちでいっぱいですが
こうして無事開催できたことは
サポートいただいた方々や
出演者、スタッフ、お客様のおかげです。

心から感謝いたします。
本当にありがとうございました!

12月23日、
場所は、秋田県のアトリオン音楽ホール。

このホールは、以前
父が宮川彬良さんと一緒に
コンサートをした場所だった。

このホールの響きを気に入り
リハーサルでは
客席までおりてサックスを吹き
音を楽しんでいたそうだ。
コンサートが終わった後も
またここで吹きたい!と。


「それじゃあ、このホールには
パパの音が貼り付いてるね」

そんなことをみんなで言いながら
私もリハーサルを始めた。

父が言っている通り
驚くほど、本当に良い響きのホールだった。

今回は、急遽
父のサックスとの“響演”も
することにしたのですが

リハーサル中は
父の音を聴いただけで
ボロボロと涙が出てきてしまった。
スタッフも、声を出して
泣いている人達もいた。

だけど、とにかく、
本番は、泣かないと決めていた。



良い響きのホールだからこそ
1曲目を予定した曲と変え
アコースティックな響きを
より感じてもらえるものから始めた。
「おひさま〜大切なあなたへ」だ。

ピアノ 扇谷研人さんと
ギター&チェロ 伊藤ハルトシくんの
優しい音がホールに広がる。
その音の中で登場させてもらった。

1曲目を無事歌い終えた。
よし、今日も泣かずにいける。

すると、客席の至る所から
涙の音が聞こえてきた。

たくさんのお客様が
泣いてくださっていたようだ。

大きな拍手をいただいた。
コロナの関係で、未だに
お客様は、半分しか入れなかったけれど
全部入り以上の拍手をいただけたことに
とても感動した。

二曲目「スマイル スマイル」では、
歌い出しで
私もやはり耐えられず
一瞬、泣いてしまった。
最初は、ぜんぜん
スマイル スマイルじゃなかったけれど
そのあとは、お客さんのおかげで
立て直すことができた。

そして、スペシャルゲストとして
来てくれたKくん。
あの素晴らしい歌声は天性のものであり
お客さんの心を、大きな愛で癒していく。
私もそのひとり。
何回、彼の存在や歌声に助けられたか。
人間としても尊敬している
最高の音楽仲間であり、親友だ。

コンサート中はいろんな話をして
Kくんやメンバー、お客さんと
笑ったり、微笑んだりして
とても幸せだった。

このホールと、あったかいお客さん。
父が、またここで吹きたい!と言った気持ちが
よく分かる。


父のサックスとの響演は
今回は2曲。

昔レコーディングした曲
そして
最後のレコーディングになってしまった曲
それぞれ、思い出がたくさん詰まった2曲だ。

父の音がホールに響く。
やっぱり、すごいなぁ。
一生かけても、父は超えられないと
あらためて確信した。
どうしたらこんな音が出せるのかな。
私の目指している“声”を
再び、ステージ上で浴びた。

実は、今回のコンサートを通して
ずっと不思議な体験をしていた。


コンサートをやる前は
今日のコンサートは、きっとパパが
そばにいてくれるだろうと思っていた。

そばで、一緒に演奏してくれるような
きっと、そんな感じになるだろう、と
期待していた。

しかし、コンサートが始まっても
まったく、そんな気配がない。

どこを探しても
ステージに父がいない。

しかし、自分が歌い始めた途端びっくりした。

そばいるのではなく
私の体の中にいるような感覚になったのだ。

歌っていても
声が勝手に出るような・・・

今まで出したくても出なかった声や音色が
どんどん、どんどん
溢れるように出てくる。

この音色は、確実に、今の私ではないな、と。

きっと父は、毎回こんな感覚で
音を奏でていたんだろうなぁ。

これは、ただの私の想像なのかもしれない。
でも、あの感覚が忘れられずにいる。



父が生きている間に
もっともっと教えてもらいたいことがあった。
父からもっと勉強したかった。

サックスも、歌も、音楽性も、人間力も
もっとたくさん教えてもらいたかった。
そんな後悔が今もある。

それはもう叶わないけれど
その代わり、一緒に演奏しながら
教えてくれるという方法が、この世にあったのか。
いや、これはある意味、あの世なのかな(笑)

父の音を聴きながら上を向くと
私も天に召されそうな気分になった。
あぁ、これが天上の音楽なのかもしれない。
なーんて、本気で思った。

今回の体験を
私は一生忘れないだろう。

歌っていないときは
父は必ず母の隣にいて
ステージを見てくれていた。



すべて、私の感じたままを
ここに書いたので
なにとぞ、笑って、読んでください。


最後に、ひとつだけ。

「北斗の拳」の中で
無想転生という奥義があります。

哀しみを背負った者のみが成しうる
北斗神拳の究極奥義。
ミュージカルでも登場するシーンで
毎回感動するのですが

今回の体験と
ものすごく、似ているのです。


父がいないのは、まだまだつらく
まだまだ信じられず
正直、まだ
よくわからない気持ちだけれど

無双転生を身に纏った今
私はこの乱世を生き抜いていけると
強く思います。

そう、ひとりで歌う時も
決してひとりではないんだなぁ。