相反した騎乗技術。 | 調教師日誌 ~仏・シャンティイーより~

調教師日誌 ~仏・シャンティイーより~

2008年渡仏。2017年調教師免許取得。フランス競馬の中心地シャンティイーでの厩舎日常風景。

自称フランス競馬に日本で1番詳しい自分も、JRAの全レースはチェックします。

 

 

好きなことをしているので苦になりませんし、なによりずっとレースを見ていると観察眼が磨かれていきます。小さい頃からのルーチンですし、こちらでは毎日レースがあるので、それを全場全部見るとなるとやはり忙しい。厩舎を運営しつつとなると尚更な訳ではありますが、正直なところ逆に嬉しい悲鳴です。

 

 

趣味が競馬ですし毎日が充実してるとでも言えますでしょうか。

 

 

それに誰も注目しないようなフランスの片田舎超ローカル競馬場も特徴をつかめるので、いつかあるかもしれない遠征の際にきっと役に立つと思います。もちろん企業秘密に属しますので公にはしませんがね。

 

 

フランスのジョッキーを始め、とりわけヨーロッパのジョッキーは『馬をふかしながら御す』とでも言いましょうか、そういう技術に長けています。それはレースだけを見ても明らか。

 

 

こちらヨーロッパでは日本、アメリカのようにレースが流れず、基本はスロー。ですので、勝敗における騎手の技量が占める割合がぐっと増します。

 

 

ふかしながら御す、と言うのは言葉で説明するのは難しいのですが、常に踏んでいるので瞬時に減加速を無駄なくコントロール出来ます。これを小さい時から当たり前のようにやっているし、こちらでは馬の能力だけでは勝ち負けできない。生き残るためには必要不可欠な技術であると思います。

 

 

今日土曜日中山9レースミモザ賞。勝ったのはクリストフとレッドベルローズ。

 

 

外枠からポジションを取りに行ったので道中初めのロスはありました。しかしながら、向こう正面にかかる所で後ろを確認しつつ内へと運び前に馬を確保。

 

 

あとはクリストフの中山競馬場勝利の方程式で、ラスト700~800mで外から加速し始め、馬郡がばらけた為に最後は比較的楽な勝ち方。馬にとっては初距離でしたら、文句の言えない騎乗でした。

 

 

この人のように常に踏んでいるから出来る、見た目は地味ですが、勝ち方でして、引っかからないようにソローっと乗って最後の直線急にガツンと手綱でアクションを起こしてもスムーズな加速は難しいでしょう。自分は馬になったことがないので実際には馬たちがどう思っているかは分かりませんが、調教師的視点の傍目ではそう思います。

 

 

とは言いますも、一方同じく今日土曜日中京9レース大寒桜賞。勝ったのは内田博幸騎手とダノンマジェスティ。

 

 

前2走とも右回りではありましたが、外に逸走、まともな競馬をしていません。

 

 

今回は初の左回り。道中馬郡につっこんで周りに馬を置いての教育的騎乗。やはり勝手をしたがる馬を強引に抑え込めて最後は着差以上の能力を感じました。ただ本質的には距離は限界でしょうね。

 

 

クリストフのアートな騎乗と対照的な内田騎手の力業もさすがと感じた今日のレースでした。