2005年7月にアメリカ、ワシントン州キング郡イーナムクロー近郊の農場で起きた事件にイーナムクロー事件(ボーイング社のエンジニアであったケネス・ピニャンが牡馬との肛門性交中に大腸穿孔を起こしその怪我が原因で死亡した事件)に着想を得た作品。

 

バンド仲間のジークとアール、ディックがガレージでバカ騒ぎをしている時、ディックが血まみれになってしまいます。ディックが怪我の原因を世間に知られたくなかったジークとアールは、ディックを車で病院まで運び、置き去りにします。病院では、ディックの死亡が確認され、警察は殺人事件とみて捜査を開始しました。ジークとアールはディックの死因を知りながら、必死に自分たちが関係した痕跡を消そうとしますが...。

 

地域を管轄する警察のトップは、杖を突きながら歩く高齢の女性。彼女と一緒に殺人事件を捜査するボリューミーな女性警察官も初めての殺人事件の捜査ということで興奮気味。殺人事件など起きそうにない、とても治安の良い地域だということなのでしょう。

 

いつの世にも、どこの世界にも、馬鹿げたことをする人たちはいるもの。特に必死に"バズろう"としている人も少なくない今、命を落とす危険もあるうような馬鹿げたことをしたがる人もいるわけで...。

 

作中で起こっている事件は、なかなかにえげつないものですが、作品自体はコメディタッチに描かれています。そもそもの原因がおバカな上に、"証拠隠滅"しようとする程、明らかに怪しい動きを重ねてしまうことになり、逆に証拠を提供してしまっている2人。ディックを運んで血だらけになったジークの車を沼に沈める場面でのジークとアールの会話などおバカな高校生みたいだったりします。

 

バタバタと動き回ってどんどん墓穴を掘っていくジークと"逃げればいい"と泰然自若としているアール。そして、何も知らずに無邪気にジークを追い込んでしまうジークの娘。捜査能力が残念というか、"刑事の勘"とは無縁で、目の前に溢れるジークの怪しさを見逃し続ける警察官たち。

 

平和だけど刺激や楽しみの少ない田舎町で暮らす人たちの鬱屈とした気分、そんな中で起きた奇妙な事件、いかにも田舎町的な処理の仕方。もう少し、"田舎町で刺激を求めずにいられないジークたちの鬱屈"の部分がしっかりと描かれているともうちょっと彼らの気持ちに寄り添いながら観ることができたような気もしますが、その辺りが、少々、薄かったのは残念でした。

 

 

 

公式サイトじ

映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』公式サイト (phantom-film.com)