ユーゴ・セナールは、時黒街の仲間たちから“ジタン"という通り名で呼ばれる一匹狼のならず者。ロマの血を引いていることから世間から冷たい仕打ちをうけていた彼は、世間に歯向かうように様々な犯罪に手を染めていました。3年前、ジタンは仲間を虐待したある村の村長を殺し無期懲役で収監されていましたが、刑務所で知り合った銀行強盗ジョー・アミラと共に脱獄し、半年間に6件もの銀行強盗を成功させます。警察はブロー警視を捜索に当らせたが、次々に居所を変えるジタンを捕えることは至難の技でした。一方、若い妻を誤って殺した暗黒街の大物、ヤン・キュックは、警察の眼を逃れるため世間から身を隠していました。ジタンたちは、ヤンが転々とする先々で事件を起こしており...。

 

現在では一般的に"ロマ"と呼ばれる放浪の民族は、かつてはエジプトから来た人々だと受け止められ、イギリス人が"Egyptian"と称されたのがまなって"ジプシー"と言われていました。そして、その"ジプシー"と呼ばれてきた集団のうち、主に北インドのロマニ系に由来し中東欧に居住する移動型民族が"ロマ"と呼ばれるようになりました。"ジプシー"と呼ばれてきた集団が単一の民族であるとするステレオタイプは18世紀後半に作られたものだとのこと。そして、ロマとジプシーのうちのロマでない集団との関係はよく分かっていないようです。

 

本作のタイトルともなっている"Gitan"は、フランスでのロマの呼び名です。Gitanという言葉は"ジプシー"から来た言葉だそうです。

 

まぁ、差別される側にいる者が、正当に差別をはねのける手段を得る機会さえ与えられず反社会的な行動を取るということはありがちというか想像しやすいストーリーなわけで、ジタンもそんな宿命を負った存在として描かれていきます。

 

ジタンとロマの人々との関わりの描き方が薄めで、彼につけられた"ジタン"という名前の重みが今一つ実感しにくいことが残念ではありますが、それでも、ワルなアラン・ドロンが魅力的で印象に残ります。

 

ありきたりな感じも否めませんが、鼠小僧的な義賊な感じとか、仲間たちとの厚い友情とか、義理とか人情とか、仁義とか、任侠映画のような男の世界のカッコよさは堪能できました。

 

差別された者の哀しさと自分たちを傷つけ排斥しようとする者たちへの怒りと、時折見せる笑顔。もしかしたら、アラン・ドロンのカッコよさだけで言ったら、ベストな作品と言っても良いかもしれません。