W・ブルース・キャメロンが愛犬を亡くした恋人のために書いた小説「野良犬トビーの愛すべき転生」を映画化した作品。原作は未読です。

 

イーサンに命を救われたゴールデンレトリバーの子犬は、ベイリーと名付けられ、可愛がられます。子どもだったイーサンの成長とともに老いていったベイリーは、やがて、息を引き取ります。けれど、イーサンを想うベイリーは、転生し...。

 

ゴールデンレトリバーからジャーマンシェパード、コーギー、セントバーナードとオーストラリアンシェパードのミックスに姿を変え、50年で3回転生するのですが、どの"ベイリー"も健気で可愛いです。小さい脳をフル回転させ、ない知恵を精一杯働かせ、頑張って生きている姿を見ているだけで満足してしまいます。犬は、反則ですね。長い歴史を人間とともにしてきた動物だけに、他の動物以上に気持ちを引き寄せられます。

 

あまりに献身的で、虐待されても人間に失望することもなく、まぁ、色々と、人間に都合よく解釈している面はあります。けれど、必要以上に泣かせようとせず、抑制の効いた作りには好感を持てましたし、イーサンとの出会いで遊びを知り、警察犬となって働くことを知り、その次の生では恋を知り、虐待されて孤独を知るといった、転生を繰り返しながら成長していくところも物語の構成として巧いと思います。

 

何かと都合が良すぎたり、本作に登場する前の"犬生"はどうなんだとか、"本当の始まり"はどうやって起こるのかとか、気になる面もないわけではありませんが、"使命"を得たところに"犬生"が始まり"使命"を果たした"犬生"で転生が終了すると解釈すれば辻褄は合うのかもしれません。

 

ベイリーによるナレーションもなかなか工夫されていたと思います。時々、やけに理解力が高まったり、物分かりが悪くなったり、不安定な感じはありましたが、その能力が、私たちが犬の知恵として受け止められる範囲には留まっていて、違和感なく観ることができました。

 

基本、ハートウォーミングな雰囲気なのですが、その中でも、イーサンもベイリーも、不運に見舞われ、不幸を味わい、傷ついています。人生も犬生も甘いだけではありませんが、それでも、生きる価値はあると伝えてくれている辺りも、本作の魅力と言えるでしょう。

 

犬を飼っている人なら、映画館から帰って、愛犬を抱きしめたくなるでしょう。人間を愛し、飼い主を喜ばせることを自分の喜びとし、誇りとしてくれる愛すべき生き物。犬たちが私たちを幸せにしてくれるその何分の一かでも、幸せにしてあげたい、犬たちが注いでくれる愛の何パーセントかでも返してあげたいものです。

 

お勧めです。

 

 

公式サイト

http://boku-wonderful.jp/