BU・SU [DVD]BU・SU [DVD]
3,990円
Amazon

 

高校3年生の麦子は、父の死後、性格が荒み、海沿いの田舎町でスナックを経営する母親との仲が悪化します。東京の神楽坂で置き屋をしている叔母の元に移り住み、鈴女(すずめ)という名をもらって芸者見習いとして修業しながら東京の高校に通うようになります。高校でも他人に心を開かない性格は相変わらずで、必要最低限のことしか喋らず、ほとんど笑顔を見せることもなく...。

 

何故、麦子が東京に来ることになったのか、"いろいろあった"そうですし、家を出る時の母との間に流れる空気、神楽坂で生活するようになって母からかかってきた電話への受け答えなどを見ると、事情があったことは分かるのですが、何があったのか具体的には触れられません。

 

説明的な表現は最小限で、美しい映像が物語を紡いでいきます。何がどうなっているのかが分からないということもないのですが、登場人物たちの心情など、想像で補いながら観ることになります。

 

勉強にも、学校での活動にも、芸者修行にも身の入らなかった麦子ですが、"八百屋お七"を踊ると宣言して、麦子は、"覚醒"します。この踊ると決めたきっかけは、あまりに唐突な感じもしましたが、人生なんて、意外にちょっとしたことで、大きく変えられたりするものかもしれません。

 

文化祭での展開はちょっとふざけ過ぎた感じがしなくもありませんが、八百屋お七を見事踊り終えて大成功!!万々歳!!!という安易な流れにならなかった点も良かったと思います。

 

人と人が影響しあい、変化が連鎖していく...。その変化が進歩なのか、後退なのかは別として、こうした変化を繰り返しながら、それぞれの在り方を見つけるとともに、人には様々なあり方があることを理解できるようになり、人は大人になっていくのでしょう。

 

1987年の映画。その頃、青春だった人(40代半ば位~50代前半位?)が観るととっても懐かしく、若さに輝き、未熟さに悩んでいた時代を思い起こせる作品だと思います。

 

麦子を演じた富田靖子が輝いています。無表情でムスッとした感じが確かに"BU・SU"でしたし、それとは対照的なエンドロールでの晴れやかな表情も爽やかで可愛らしかったです。拗ねてムスッとして周囲の好意もはねつけ孤立していた麦子が、魅力的な笑顔を見せた時、それは、自身の人生を受け入れ、社会と繫がりを持つことを決めた瞬間でもあったのだと思います。

 

特に傑作とか、強く印象に残る作品というワケでもありませんが、それなりに楽しめました。観ておいて損はないと思います。