1970年10月4日、27歳で夭折した女性ロック・シンガー、ジャニス・ジョプリンの半生を描いたドキュメンタリー作品です。

 

家族、バンド仲間、かつての恋人...。ジャニスの周辺にいた人々の証言を中心に、ジャニスの半生が語られます。

 

遺族の全面的な協力を得て作られた作品とのことで、生前、ジャニスが家族に宛てたごくごく私的な手紙も何通か登場します。そこには、不安とプレッシャーにさいなまされる姿が浮かび上がり、一見、奔放で自由気ままに見えるジャニスの中にある弱さがあり、ジャニスのキャラクターを立体的に味わい深く見せてくれています。中でも、10年振りの同窓会の映像は、彼女の孤独の深さを切実に感じさせられました。

 

証言の内容も、ジャニス万歳一辺倒ではなく、客観的な視線でまとめられていて彼女のパフォーマンスが作られていった背景が伝わってきます。

 

愛されたくて、でも思うようには愛されず、常に不安や焦燥を抱えていた姿は、哀しくも痛々しくもありました。そして、そんな欠損を埋め合わせようとするかのような、魂を絞り出すようなパワフルな歌声が胸に刺さりました。歌うことでしか本当の自分でいる気持ちになれず、歌うことでしか認められていると思えず、歌こそ自身の才能を活かし、自己実現できる道と信じられた本物の歌姫の声がそこにありました。

 

折角の映画館(シアター・イメージ フォーラム)での鑑賞だったので、本当なら、もっと大音量でジャニスの歌声を堪能したかったですが...。音響がちょっと残念でした。それでも、観終えてしばらく、彼女の歌が耳に残りましたが...。

 

エンドロールでジャニスについてインタビューを受けるジョン・レノンとオノ・ヨーコの映像が流れます。ジョンは、ドラッグが蔓延する状況について聞かれ、「閉塞的な世の中での生きづらさがある中で、ドラッグが自己実現するための道具になってしまっている」というようなことを答えていました。俯き加減に話すジョンと、真っ直ぐな視線で彼の発言を肯定するヨーコの姿を見ていると、ジャニスが何よりも欲していて得られなかったものが、ジョンにとってのヨーコだったのだろうと思えてきます。世界を放浪していた男性からの電報が亡くなる前に届いていたら、ジャニスの運命は大きく変わったのかもしれません。

 

音響は残念でしたが、観ておきたい作品だと思います。特にジャニスのファンというワケではありませんが、それでも、楽しめました。

 

 

公式サイト

http://janis-movie.com/