伝道こそ自分の使命と思い、ベルギー、ブリュッセルにある伝道師学校で学んだヴィンセント・ゴッホは、1878年、ボルナージュ地方の炭鉱町へと赴きます。神の声を伝えるために人々の生活に入っていきますが、聖職者の権威を貶める行為として教団から非難されます。やがて、病気になったヴィンセントは、弟のテオに連れられて帰郷します。やがて、ヴィンセントは、絵を生涯の仕事とすることを決意。テオの援助を受けながら絵を描き続けますが...。

 

伝道師以降のゴッホの生涯を比較的、オーソドックスに描いた作品と言えるでしょう。"炎の人"のタイトル通り、激しい一面にスポットが当てられています。様々な場面で、家族を友人を周囲の人々を、時に些細な意見の食い違いから、時に言い掛かりとしか思えないような理由で非難し、怒りをぶつけ...。彼を生涯にわたって支えた弟のテオに対してさえ容赦はありません。テオは、このヴィンセントをよく支えたものだと感嘆させられます。ヴィンセントがいかに生きたか、描いたかということも大切なのでしょうが、それ以上に、テオがヴィンセントを支えた理由に興味を惹かれてしまいます。まぁ、作中にも、時折、ヴィンセントが見せる優しさや気遣いにテオが惹かれている様子が描かれますが、それだけではちょっと弱いような...。

 

そして、ゴーギャンとの共同生活や喧嘩も見所となっています。2人の間でたたかわされる議論というにはあまりに喧嘩腰な遣り取りが、2人の絵に対する考え方の違い、それぞれの画家としての資質の違いを見せています。

 

あまりにゴッホに似ているカーク・ダグラスも良かったのですが、ゴーギャンを演じたアンソニー・クインも、如何にもなゴーギャン像を表現していて、ちょっとドキュメンタリーチックなレベルのリアリティが感じられました。

 

ゴッホがゴーギャンのために用意した部屋の壁には、数枚のひまわりの絵が飾られていました。生前、ほとんど絵が売れなかったゴッホですが、今では、この部屋の中の絵だけでも百憶円ではすまないでしょう。絵で食べることができなかったゴッホの絵が、富裕層の投資の対象となっている現実を考えると複雑なものがあったはしますが...。

 

それでも、世界各地の美術館の協力があり、ゴッホの名作の数々が登場するのは嬉しいところ。それだけでも、十分に見応えあります。