ぼくとアールと彼女のさよなら(特別編) [DVD]/コニー・ブリットン
¥4,104
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高校生のグレッグは、父親の影響を受け、幼馴染のアールと名作映画のパロディを作って楽しんでいました。学校では、全てのカーストの学生たちと適度に付き合いながら、極力、目立たないように過ごしていました。八方美人で、他人には深入りせずにいたグレッグですが、母親の意向で、白血病になった同級生の女の子の相手をすることになり...。

登場人物たちが、如何にも今どきの若者な感じです。ちょっと背伸びして大人ぶって素直じゃなくて、けれど、子どもの幼さい真っ直ぐさも残していて、自意識過剰で、どこか自信を持てなくて...。当たり前に熱い青春を謳歌するタイプじゃない高校生たちを等身大に描いた感じで、観ていて懐かしいさが呼び覚まされます。

素直な"難病モノ"ではありません。病気をしていることの大変さは描かれますが、ヘンに悲劇的な要素を強調するような演出はないし、"病気の幼馴染のために自分を犠牲にして悲壮感たっぷりに頑張る"的な安易な友情物語にもなっていません。その典型的な路線を拒んでいる辺りもグレッグとアールの性格に合っていると思います。

「市民ケーン」「めまい」「時計じかけのオレンジ」「勝手にしやがれ」「羅生門」「ブルーベルベット」...、実に多くの名作のパロディを作っています。この元ネタの選定の仕方も、ちょっと狙いすぎな感じもしますが、素直じゃない高校生らしいと思います。パロディ映画を作り始めて僅か数年という設定で、その時に既に42作を製作しているというのは、あまりにハイペースな感じがします。本作の物語の中でも、それ程長い期間ではないはずなのに、何作も撮っている雰囲気ですし...。パロディの捻り方など、高校生が遊びで作っているにしても安っぽい感じがするのですが、それにしてもペースが速すぎます。かなりの超短編作品ばかりってことなのでしょうか...。多くの作品が取り上げられている面白さはありますが、ここは、制作のペースにもっとリアリティを持たせても良かったような気がします。それに、なかなか渋い元ネタの選び方をしていることを考えれば、もっと1本1本を丁寧に拘って作る方がキャラクターに合ったやり方だったのではないかと...。

レイチェルに対しても、なかなか自分の素直な想いを伝えられなかったグレッグが、最後にレイチェルに見せた作品は、それまでのパロディ作品とは全然違った雰囲気の作品でした。

主要人物3人を取り巻く、グレッグの両親、レイチェルの母親、グレッグとアールがよく一緒に過ごしている学校の先生といった人々が、それぞれにちょっと変わっていて個性的なのですが、ヘンな部分だけが強調され、人物像の掘り下げが不十分で、全体に薄味になってしまっていて、その点も残念でした。

いくつか気になる点はありましたが、それでも、"古典映画のパロディを作り続ける高校生"という登場人物の設定は面白かったですし、ナナメな感じでありながらも、レイチェルとのかかわりの中で成長していくグレッグの姿には清々しさが感じられました。

日本では劇場未公開というのは、勿体ない感じがします。観ておいて損はないと思います。