桜木紫乃の同名短編小説を映画化した作品。原作は未読です。

北海道、旭川で裁判官として働く鷲田完治。(佐藤浩市)ある日、学生時代の恋人だった結城冴子(尾野真千子)が被告人として目の前に現れます。彼女に執行猶予付きの判決を与えた鷲田は、裁判の後、冴子のスナックに通い逢瀬を重ねるようになります。やがて、鷲田の妻子の待つ東京への異動が決まりますが、彼はすべてを捨てて冴子と共に暮らしていくことを決意。けれど、冴子はその想いに応えることなく完治の目の前で自ら命を絶ってしまいます。それから25年、釧路で国選弁護の仕事のみでひっそりと生きていた鷲田は、担当した覚醒剤事件の被告、椎名敦子に執行猶予付きの判決を勝ち取り...。

冴子は、2度、鷲田の元を離れています。最初は鷲田が司法試験に合格した時。学生時代から犯罪に関係していた部分があり、鷲田が司法試験に合格した以上、離れるべきと考えて身を引いたということなのでしょうか。

そして、2度目は、旭川を出る時。誰かの重荷になるくらいなら早く死にたい。それが冴子が自殺した原因なのでしょうか。そのことにより鷲田を家族の元に帰らせようとしたのでしょうか。けれど、その後、鷲田が何もなかったかのように家族との生活に戻れるタイプではないと冴子が知らなかったとも思えません。実は、あの場面で、"ともに電車に乗り、発車の直前に鷲田を車内に残して電車を飛び降り、行方をくらます"という展開を予測していたのですが...。あのような決着の付け方をしたのは、家族を捨てようとした鷲田への罰だったのかもしれません。

鷲田もそう受け止めたからこその"贖罪"だったのでしょうか。きちんと食事を作り、きちんとした日常生活を送っている様子が見て取れます。そのきちんとした感じは、ある意味、受刑者の生活に似ているかもしれません。

そんな鷲田の日常の中に登場する敦子。ここで安易に恋愛関係にならなかった点に好感を持てました。敦子が鷲田の家で倒れてしまう展開はあまりにチープな感じもしましたが、原作の問題なら仕方ないですね。いきなり倒れるほど腎臓が悪いのに、その後、普通にいろいろなものを食べているところとか、気になりましたが...。普通、そこまで腎臓が悪いなら、タンパク質を制限されるのではないかと...。

それでも、その面影が冴子に重なる敦子の登場により、止まっていた鷲田の時間が動き始める様子は心に沁みましたし、鷲田が分かれた息子の様子を判事補から聞く場面はホロリとしましたし、終点だった駅が出発点となるラストの展開も良かったと思います。この部分が、最初の方の「一度、電車で東京まで」のセリフに繋がるところも良かったです。

登場人物もあまり多くなく、淡々とした雰囲気の作品に、主演の佐藤浩市が深みを加えています。中村獅童、泉谷茂といった実力派が脇を支えていて、味わいのある作品に仕上がっています。なかなかお勧めです。

これは、知識不足で、良く分からないのですが、国選弁護の収入だけで、"十分すぎる送金"をして、自分の生活を成り立たせることは可能なのでしょうか。送金の額も分かりませんが、十分すぎるというのなら、10万は超えるのではないかと...。活動の場は釧路市。その規模の都市でどの程度の頻度で国選弁護の仕事が入るのかも分かりませんが、どの程度の収入を得られるものなのでしょうか?まぁ、事務所を構えず自宅で仕事をしているようですし、暮らし振りは質素ですし、コストは随分抑えられているのだと思うのですが...。


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http://www.terminal-movie.com/


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