風にそよぐ草 [DVD]/サビーブ・アゼマ,アンドレ・デュソリエ,アンヌ・コンシニ
¥5,040
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1996年にクリスチャン・ガイイの書いた小説「ランシダン」が原作(集英社文庫「風にそよぐ草」河野万里子訳)。原作は未読です。


ある日、歯科医のマルグリット(サビーヌ・アゼマ)は街で引ったくりに遭いバッグを持ち去られます。駐車場に捨てられた財布を拾ったのは初老の男性、ジョルジュ(アンドレ・デュソリエ)。中に入っていたマルグリットの小型飛行機操縦免許の写真を見て、彼の中で何かが弾けます。迷った挙句、警察に届け、財布は、マルグリットの元に戻り、彼女はお礼の電話をかけますが...。


どこからどうみても完全にストーカーなジョルジュ。何故か、そんなジョルジュを追うようになるマルグリット。ストーカーで、変にエラそうで、すぐ切れて、訳の分からないことを言い出すジョルジュのどこが良かったのか...。まぁ、マルグリットにとって、初めてのタイプの男性で、初めての体験で、これまでに触られたことのない感情を揺さぶられたのかもしれませんが...。


もっとも、人が人を好きになる理由なんて、本当は、明確なものがあるワケではないのでしょう。そう、訳もなく、恋してしまうのであり、愛が生まれてしまうであり、恋や愛の理由などというものは、後付けの理屈にすぎないのかもしれません。


年齢を重ねても愛し方が大人になるわけではなく、第三者が納得できるような理屈があって恋愛するわけでもありません。恋だの愛だの、そんなものは、理屈では説明できないものなのだし、当事者たちが予想できないところで突然生まれてしまうものだし、人はいくつになっても恋愛にドキマギするものなのかもしれません。


マルグリットの心が、何故、ジョルジュに向かったのかという点については、共感しにくいものを感じましたが、マルグリットの、そして、ジョルジュの心情の変化は実に丁寧に描かれます。ジョルジュに心を奪われていくについて、患者が痛い思いをする...といった辺りも、なかなかコミカルに描かれていて印象的でした。


ジョルジュが追う側から追われる側に立ち位置を変えた辺りからは、ジョルジュの妄想なのかと思いながら観ていたのですが、そうとも言い切れないような...。


何がどうなっているのかを気にしだすと、オカシナところだらけで物語に集中できません。何も考えず、作品の世界に浸るのが正解でしょう。


ジョルジュも、「トコリの橋」という映画を観た後で、言っています。"映画のあとでは何も驚かない。あらゆることが起こりうる。すべてが自然に起きるんだ。"って。