黒い罠【ユニバーサル・セレクション1,500円キャンペーン2009WAVE.1】 [DVD]/オーソン・ウェルズ,ジャネット・リー,ヴィクター・ミラン
¥1,500
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アメリカとメキシコの国境の町で、突然、車が爆発し、車中の富豪とストリッパーが死ぬという事件が起きます。ハネムーンの最中に事件に遭遇したメキシコの犯罪調査官、ヴァルガスとアメリカの敏腕刑事、クインランは共同で捜査をすることになりますが、2人は衝突ばかり。やがて、ヴァルガスは、敏腕といわれたクインランの実績の裏を知ることになり、クインランは、ヴァルガスと彼の妻、スーザンを陥れようと...。


1958年勢作。白黒の50年以上前に作られた古い映画です。さすがに古びた感じがするのは、実際に古いということ以上に、本作に影響を受けた作品がその後いろいろと現れ、そうした作品群を見た後では既視感があるのもやむを得ないところ。多分、勢作当時としては、かなり画期的な作品だったのだろうとは思います。


クインランを演じるオーソン・ウェルズの印象的な容貌と巨漢、過度にも感じられるまでに抑え目の演技ゆえに却って浮き上がるような存在感、彼が醸し出す不気味な雰囲気に合った映像の独特な空気感。クインランを始めとするいかにも怪しげな人々の中で孤立するヴァルガスの上に立ち込める暗雲。ヴァルガス夫妻を取り巻く、黒い情念が渦巻くような空気感が印象的です。


クインランの情婦、ターニャを演じるマレーネ・ディートリッヒが、また、見事な存在感を出して、国境の町の怪しげな夜の雰囲気を出しています。特にラストの彼女の後姿は心に残ります。


犯罪ものの場合、どうしても、犯罪捜査のあり方などに時代が反映されてしまい、その点でも、古さが感じられてしまうのかもしれません。特に、証拠の揃え方、誤魔化し方が、今を知る私たちから見ると、あまりに稚拙で引っかかってしまいます。もちろん、それは、全く、作品の製作者側の問題ではないのですが...。


"時代に耐える"という点において、犯罪者の場合、不利があるのは間違いないでしょう。


それでも、映像の美しさ、オーソン・ウェルズ、マレーネ・ディートリッヒは見応えありました。メキシコ人のヴァルガスを演じたのがチャールストン・へストンというのは、少々、無理があったと思いますが...。


レンタルで十分かとも思いますが、一度は観ておきたい作品だと思います。



黒い罠@ぴあ映画生活