夜のバッファロー [DVD]/ディエゴ・ルナ,リス・ガリャルド,ガブリエル・ゴンザレス
¥3,990
Amazon.co.jp


日本では、一般公開はされておらず、2007年の「第4回スペイン・ラテンアメリカ映画祭」でのみ上映されています。


22歳のグレゴリオは精神病院への入退院を繰り返していましたが、恋人のタニアと親友のマヌエルに支えられながら日々を過ごしていました。しかし、次第にタニアとマヌエルは惹かれあうようになり、グレゴリオとマヌエルの友情は崩れていきます。時は過ぎ、マヌエルは、医師から完治したと告げられ、治療を終えたグレゴリオとの友情を取り戻そうと、グレゴリオに会います。けれど、その2日後、グレゴリオは謎をいくつも残して自殺してしまい...。


グレゴリオの身体の中を這い回るハサミムシ。魅入られると死に至るという"夜のバッファロー"。それは、グレゴリオの狂気が産み出したものなのでしょう。グレゴリオに底知れない恐怖をもたらすものは、フツ~人々にとっては、愚かな妄想でしかありません。グレゴリオはハサミムシに犯される恐怖を訴えますが、彼の恐れや悩みは理解されません。彼の妄想にともなう苦しみと理解されない孤独。


奔放なタニア。けれど、他の異性と関係を持っているのは、どうやら、グレゴリオも同じ。そして、マヌエルも。それなのに、責められるのはタニア。まぁ、このタニアの行動の背景にあるものもあまり伝わってきませんでした。この人、やることが、少々、激しすぎるというか、エキセントリックというか...。タニアの言動の背景にあるものがもっと描かれていると、もっとタニアに想いを寄せることもできたのではないかと思うのですが...。


時間の流れが錯綜し、ストーりーは分かりにくいのですが、まぁ、筋を追ってみれば、それ程、どうということもない三角関係の恋愛物語です。ストーりーの語り方に趣向を凝らすのではなく、もっと正攻法の描き方をして、人物描写を丁寧にした方が深みのある作品になったような気がします。個々の人物像や、それぞれの関係性が伝わってこなくて残念。


どうやら、グレゴリオは統合失調症のようですが、そんな彼に「完治した」という医者もどうかとは思います。まだ、若そうな彼にそう簡単に"完治"なんて言ってイイもんだか...。


グレゴリオとマヌエルの見分けがつきにくかったところも、本作の分かりにくさの原因だと思いますが、これは、日本人で、普段、日本人以外と接することの多くない私だからなのでしょうか?


"謎"の解明も中途半端で、この点でも、消化不良な感じが残りました。


描き方によっては、面白くなり得たであろう作品なだけに残念です。