女はみんな生きている [DVD]/カトリーヌ・フロ,ヴァンサン・ランドン
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仕事の忙しさを口実に面倒なことはすべて妻のエレーヌに押し付ける夫。息子は息子で学生の身ながら勉強もせず2人の恋人と遊ぶことに夢中。そんなオトコたちに家政婦のように扱われるエレーヌでしたが、ある日、ふとしたことから、一人の娼婦、ノエミが男たちに襲われる場面に遭遇します。ノエミのその後が気になったエレーヌは、ノエミが入院する病院に泊り込んで彼女の世話をするようになり...。


不満を抱えながらも、夫の横暴を受け入れてきたエレーヌですが、ノエミと関わるようになり、徐々に、夫や息子に振り回される生活から抜け出していきます。自分が助けないとならない相手がいるという自覚が彼女の中に眠っていた力を呼び覚ましたのかもしれません。ストーリーの進行とともに、生き生きとし、逞しさを見せていくエレーヌの姿が印象的です。


ノエミの"眼力"が印象に残ります。怪我を負わされ病院で治療を受けるノエミが、瞑っていた眼を大きく見開くシーン。それは、ノエミが再び生に向かうことを示すと同時に、エレーヌの中の何かを目覚めさせる力となったのかもしれません。


ノエミ自身も彼女を襲う危機の中でその力を磨いてきました。元々、成績優秀だったとのことですが、彼女を襲う悲劇の中で、その才能は磨かれていき、自分を護る武器となってきたことが彼女の口から明かされます。


"復讐劇"も痛快。ノエミの客たちへの、そして、組織への復讐。家族への意趣返し。中でも、父へ向けた最後の言葉。エレーヌのための行動だったのでしょう、ノエミのエレーヌの夫と息子への対応も、なかなか考えられていてコジャレタ感じ。特に、エレーヌの夫を騙して母親の元に連れてくる場面。気が利いています。


まぁ、少々、巧くいきすぎな部分も目立つのですが、自分たちを虐げ、搾取する者たちに復讐をし、自分たちの人生を切り開いていく姿は、爽快な感じでしたし、女4人が並んで海を眺めるラストは、それぞれの視線の先にあるものを思うと感慨深いものがあり、心に沁みるシーンとなっていました。


制度は整ってきているとはいえ、人々の心の中からはなかなか払拭しきれない男尊女卑な意識、移民問題、宗教問題、国際的な売春組織とそこに絡んでくる人身売買の問題。深刻で重い社会的な問題を扱いながら、程よい軽さとユーモアも感じられ、エンターテイメント作品としても成立している点が見事。


楽しむとともに、いろいろと考えさせられました。一度は観ておきたい作品だと思います。



女はみんな生きている@ぴあ映画生活