俺は仲間のKさんと一緒に静岡にいた。
なぜかというとUMBの静岡予選があるからだ。
UMBとはアルティメットエムシーバトルの略で、日本で一番歴史のある有名なラップバトルの大会だ。
日本一のラップバトル王者を決める大会である。
お笑いでいうところのMー1グランプリだと思ってもらえると話が早いかもしれない。
(俺はお笑いブーム世代だったのでお笑い大好きなのだ)
ラップを始めて1ヶ月もしないのにUMBに出る・・・というわけではなく。
フリースタイルラップを教えてくれているカイさんが静岡予選に出場するのでそれを応援しに行ったのである。
会場は静岡駅から10分ほどのクラブ、ネクストエイト
友人のKさんと会場入りすると、見るからにBーBOYですみたいな人たちがわんさかいた。
17時に会場がオープンして、18時前にMCニガリというラッパーのライブから、いざバトルが始まる。
エントリー表を見てみると、40人ほどのラッパーがエントリーしていた。
この予選は47都道府県で行われている。
すごい、サイファーの時も感じたが、HIPHOPの熱気が全国に響いているんだな・・・
UMBは2005年からスタートしているらしい。
という事は、18年間もこのイベントを草の根的に続けていたのか・・・
ラップがブームになる前から、コツコツとイベントを続け、草の根的にHIPHOPの熱を燃やし続けてきた人たちがいる。
こういった方々のお陰でラップブームに火が付いたんだなと改めて実感と感謝が湧いてくる。
バトルスタート
MCニガリのライブ3曲を見た後にバトルが始まる。
にしても、東京の大きなクラブとは違い、クラブ自体はあまり大きくない。
人数はだいたい100人ぐらいだっただろうか?かなり入っていた。
熱気と、ステージの距離が近い!!
ステージも30cmぐらいの段差しかなかったから、ほぼ同じような目線でラッパーが歌ったりバトルしたりするのだ。
これは有名アーティストのライブに行くのとは全然違う緊張感やひりひり感、面白さがあると思った。
手を伸ばせばすぐそこにアーティストがいる。というか出場ラッパーたちの控室とかないから、普通にフロアにラッパーがいるのだ。
そこにいたお客さんがそのまま呼ばれてステージに上がっていくみたいな。
おもしれー・・・!!
ラッパーの試合が始まる!
知らないラッパー同士。1回戦という事もあり、あまり声が聞こえなかったり、フリースタイルダンジョンとかで見いてたようなヤバいラップみたいのはなかった。というか、プロって本当にすごいんだなと感じた。
淡々と試合が続いていく。あっさりしているなぁ。
そうこうしてるうちに5回戦カイさんの試合になる。
こっちまで緊張してきた。
先行はカイさん。高校はカイザーTという高身長の若いラッパーだった。
カイさんはステージの上で踊ったりトリッキーなラップをして、カイザーTはオーソドックスな固い韻をラップしていた。
会場はかなり盛り上がって今日初めての延長戦に突入した。
延長戦の結果、カイザーTの勝利。
カイさんの初バトルは敗北となってしまった。
会場はも延長になって熱気が出ていた。
素直に会場をぶち上げている姿はすごいと思った。
そして、延長になって試合が終わった後は二人がガチっと握手をしていた。
その試合後の検討を讃えあう姿もまた良いものだと思った。
自分もあの舞台に立ってラップで会場を沸かしたりすることができるようになりたい。
今まで裏方をやっていたが、今後は表に立って表現者として、アーティストとしてかましていくのだ。
現場に行くという事
今回現場に足を運んで分かったことはたくさんある。
改めて感じたのは、現場に出て、自分の目で見て耳で聞いて体感することの大切さだ。
特に今まで未知の領域だった場合はこれが大切になる。
動画で観たり、文字で読んでいる情報の情報量というのは、やはりきわめて小さい。
何度バトルの動画を見たり、ラップで聞いたとしても、実際に生の現場で得られる緊張感や、現場の進行、スピード感、熱量なんかは分からない。
サイファーだってそうだった。
実際に強制的に足を運んでみてラッパーの人たちと触れてみるまで分からなかった。
バトルもそう。
ひとりでラップして1週間、少しずつラップができるようになった。
これもまた体感した結果だ。
その後、人前でのラップを始めてバトルで体感した結果、ぜんぜんラップができなかった。
その後サイファーに参加して、また刺激と生のラッパーのすごさ・やさしさ・楽しさを体感したのだ。
新しい領域に挑戦する時は、アレルギー反応や恐怖もあると思うが、とにかく現場に出てみることが大切だと実感できたのが大きい。
次のステップとしては、日々の訓練やサイファーを通してラップのスキルを磨きつつ、自分自身がラップバトルに出るという未知に向かっていきたい。
予想している情報や刺激とは、実際にやってみると絶対に違うんだろうなと分かる。
だから楽しみだ。
そんな情報量の蓄積が俺をよりHIPHOPな人間にしてくれるんだと知っている。