質問を頂きました。
(このブログに頂いた質問は、同じような疑問をお持ちの方のために公開しています。)
変形股関節症と診断され、10年以上何とか過ごしておりましたが、
ただただ普通の生活がしたく手術を検討しています。
定期的な病院の通院はなかったので、手術を受ける病院を探しています。
ロボット支援やナビゲーション支援のある病院を選んだ方がいいのでしょうか?
質問ありがとうございます。
ネットで調べると、いっぱい出てきますね。
宣伝(?)が凄いです。
「AI」とか「ChatGPT」などの流行も関係あるのでしょうか?
ナビゲーション手術とは、簡単に言うと、
「機械(ナビ)に、股関節の形状や位置関係を案内してもらって行う手術」
ということになります。
(ちょっと違いますが、)カーナビと運転手のような感じでしょうか?
人工関節置換術ナビゲーションシステム|PL病院 (plhospital.or.jp)
また、ロボット支援手術を調べても、たくさん検索で引っかかってきます。
ロボット支援人工関節手術|人工関節|東京女子医科大学整形外科 (twmu.ac.jp)
人工股関節置換手術支援ロボット 「ROSA Hip」をアジアで初めて導入 | 藤田医科大学 - Fujita Health University (fujita-hu.ac.jp)
Mako 手術支援ロボット「メイコー」 | 特色と取り組み | 神戸市灘区の医療法人財団 神戸海星病院 (kobe-kaisei.org)
簡単に言うと、
「あらかじめ計画した通りに、ロボットが、骨を切ったり削る作業をしてくれる手術」
「術者が機械を操作して、患者さんに触れずに精密な作業ができる手術」
みたいな感じでしょうか?。
ちょっと検索しただけで、たくさんの病院が、ものすごく宣伝しているので、ちょっとビックリしました。
(購入費用が非常に高いので仕方ないですね・・・)
ロボット支援やナビゲーション支援自体は、科学の進歩として、もっともっと進歩して欲しいと思います。
普通の医師が手術しても100%良い成績が出るようになって、「スーパードクター」という言葉がなくなればいいですね。
(本気でそう思っています。)
ナビゲーション支援の問題点・注意点は、
先述したように、カーナビと運転手の関係のようなものでもあるので、
「やはり、術者の能力・技量に左右される。」
(高齢者の車の事故はよく聞きますよね。)
ということでしょうか?
また、ロボット支援の問題点・注意点は、
「骨は判別できるけど、筋肉や神経などを判別してくれる訳ではない。」
「操作型のロボットでは、実際の感触はわからない。」
これらの支援を使えば、確かに術後のレントゲンはきれいですが、
「手術において、筋肉・神経・血管・関節包などの扱い、関節のバランスなども非常に重要。」
「手術には、精密な作業以外の異なる要素がたくさんある。」
ということでしょうか?
昔、海外の有名な先生が来日されていて、人工「膝」関節の手術を見学をしていた時に話されていたのですが、
「私が知っている先生がロボットを使って人工膝関節の手術をした。ロボットが骨を斜めに切ってしまって、膝が「く」の字になった。彼は今裁判中だ。」
と、ロボットを過信することに対して警告されていました。
先日の学会で、
MISで傷を小さくして、術者がナビゲーションの画面を見ながら、
リーマーなどを小さな皮切から体内に突っ込んで、骨を削っている動画を見ましたが、
私はちょっと怖いと思ってしまいました。
現時点では、
ロボットにしてもナビゲーションにしても、術者自身が五感を使って術野を確認しながら、あくまでサポートとして運用している病院が良いと思います。
「ナビゲーション(ロボット)を使っているので、手術の傷が非常に小さくて済みます。」
「ナビゲーション(ロボット)を使っているので、脱臼しません。」
のような説明している病院はちょっと気を付けた方がいいかもしれません。
(そんなものを使わなくても、傷は小さくできますし、脱臼もしにくくできます。)
(特定の病院を言っている訳ではないです・・・。)
残念ながら、これらの分野はまだ発展途上です。
「何も使わなくても手術が上手な先生が、ナビゲーションやロボットをサポートに使う。」
というのがベストなのかもしれません。
(今思えば、20年くらい前に、えにわ病院でロボット手術をされていた春藤先生は、ロボットなどなくても非常に上手でした。当時、助手をしながら「先生ならロボットいらないでしょ。」と思っていました。)
私は古いタイプの医者なので、違う意見を持った先生方もたくさんおられると思いますが、
あくまで私の意見を話させて頂きました。
以上です。
少しでも参考になれば幸いです。