先日、

 

① 今回の日本人工関節学会に参加して、一番印象に残った報告は、「ARMD」(アームド)という合併症だった。

② 人工関節の素材の組み合わせの中で、「メタルとメタルの組み合わせ」の方には是非知っておいて欲しい。

③ 「Metal-on-Metal(MoM)人工股関節置換術(THA)は金属摩耗粉が原因で局所的に組織毒性を有することが知られており,偽腫瘍や組織壊死などの金属摩耗粉に起因する不具合はARMD(adverse reaction to metal debris)と総称されている。」

 

という話をしました。

 

 

興味のある方のために、もうちょっとだけ詳しく話しておきます。

 

厚生労働省の資料があるのですが、

我が国における金属摩耗粉による人工股関節置換術合併症の調査研究 | 厚生労働科学研究成果データベース (niph.go.jp)

 

この中では、日本だけでなく、海外での成績についても触れてあります。

 

「英国では・・・・。再置換率は9年でBHR・ASR・Cormet2000表面置換がそれぞれ8.11・36.4・16.34%で、Corail/PinanacleのMoMが19.89%と極めて高率であった。」

 

「オーストラリアでは・・・・。21,946股にMoMが使用され、12年間での再置換率は18.1%であった。」

 

とありますから、術後10年くらいのうちに2割前後の患者さんが、再置換術に至っていることになります。

 

世界的に見ても、メタルとメタルの組み合わせの成績は非常に良くない、ということです。

 

 

メタルとメタルの組み合わせの人工関節については、10数年前の日本人工関節学会でも、頻繁に発表されていましたが、全然見なくなりました。

 

当時、流行った「表面置換型」と言われる機種も、だいたいメタルとメタルの組み合わせでした・・・。

 

 

今回の例に限らず、みんながこぞって飛びついた流行が、後日、成績不良であることが明らかになることがあります。

 

私が最新の機種や最新の術式をあまり採用しない理由の1つがこれです。

 

「良かった。良かった。」という発表はするのに、成績不良の発表はされないことが多いので、成績が安定していることが確認された機種、術式しか採用したくないです。

 

私の術後の患者さんは10年以上のお付き合いになることが前提なので、どうしても用心深くなってしまいます。

 

当時、「スーパードクター」「名医」とマスコミでもてはやされていた先生も、「最新の表面置換型を取り入れています。」的な宣伝をされていました。

 

かなり多くの患者さんが、これらの機種の手術を行われているのではないか?と思っています。

 

繰り返しになりますが、心当たりのある患者さんは必ず受診をした方が良いと思います。

 

 

決して不安を煽りたいわけではないのですが、学会で聞いた報告では、放置された「ARMD」(アームド)はかなり大変な状態になってしまっていたので、再度話させて頂きました。