今回はちょっと難しい話です。

 

 

以前、院内で患者様が亡くなられた時に、

「Aiをすべきだったのか?」

という話が出たことがあります。

 

Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)とは、

「CTやMRI等の画像診断装置を用いてご遺体を検査し、死因究明等に役立てる検査手法」

とされています。

 

死亡時画像診断においては、遺体を 撮影・読影することで、体表(外表) のみでは分からない遺体内部の情報 (骨折や出 血等) が得られることから、 解剖の要否の判断や死因究明の精度の向上に貢献すると 考えられています。

 

簡単にいうと、

「ご遺体をCTやMRI検査する」

ということですね。

 

 

今回の場合、90歳を超える患者さんだったので、「絶対必要か」は個人的には微妙な印象でしたが・・。


しかし、もし子供さんが亡くなった時、死因については知りたいと思うご家族は多いでしょう。

 

また、考えたくはありませんが、虐待などの診断にも有効だとされています。

 

この説明だと非常に有効そうに聞こえますが、広まっていないのには色々な理由があります。

 

例えば費用です。

 

「日本医師会の報告書においては、死亡時画像診断1件当たりの撮影・読影費 用は 52,500 円と試算され、小児全例に死亡時画像診断を行うためには合計約 2億5千万円、救急搬送されて死亡した患者などに死亡時画像診断を行うため には合計約 50 億円が必要であると試算されており、・・・。」

 

とか

 

「茨城Ai研究会では2018年夏に茨城県内のAi実施状況を把握すべく、CTを保有する218施設を対象にアンケート調査を行った 。 回答率は99.5%(217/218)。そのうち、Aiを実施している施設は33.6%(73/217)であった。・・・複数回答可としたとき、全73施設のうち52.1%で遺族負担、41.1%でAi実施施設負担、26.0%で生前画像として保険請求、43.8%で依頼元(警察)負担としていた。」

 

などとされています。

 

また、1,2時間を要することが多く、ご家族もすぐにはご遺体を連れて帰れません。

 

しかも基本的には普通の患者さんがいない、時間外の撮影になります。

 

ご遺体は出血や下血など色々付着していることも多く、シーツを敷いたり、使用後の機器の消毒なども必要です。

(通常の患者さんも使用するので。)

 

Aiをしている内に死後硬直が進み、関節が曲がりにくくなって、お棺に入れる姿勢をつくることが難しくなることもあるそうです。

 

体にメスを入れる司法解剖や病理解剖に比べれば、ご遺体を傷つけないので、遺族の精神的な面では良いとは思いますが、まだまだ改善する余地があります。

 

 

当院の問題で言うと、普通のCTは放射線医師が読影してくれるのですが、Aiは契約外なので読影してもらえない、ということでしょうか?

 

 

今回は、いつもと違う内容の話でしたが、CTがある施設では基本的に可能な診断ですので、知識として覚えておいて損はないと思います。