イチロー氏の「しびれる勝ち」に覚えた違和感 ジャパンC馬券の裏側 忠実な「宣伝マン」の仕事 | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
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  イチロー氏の「しびれる勝ち」に覚えた違和感 ジャパンC馬券の裏側を考える

 

 みなさま、お元気ですか。

 今日、イチロー氏が東京競馬場に来場し、ジャパンCのプレゼンターを務め、最終レース終了後には芝コースで行われたトークショーに出演しました。

 そこでイチロー氏は、「3連複で、25通り買いました。勝ちました。いやあ、しびれますよ。」と語ったのです。

 それで私はイチロー氏が自分で馬券を買ったのかと考えましたが、この「しびれる」という言葉には違和感を覚えました。

 25通り買って、そのうちの1つが当たったという話ですが、それだけで「勝った」「しびれるほど感動した」というのは本当なのでしょうか。

 ちょっとニュース記事の読者コメントを見てみます。

 

読者コメント1 花岡貴子 ライター、競馬評論家、脚本&漫画原作 補足

今年のジャパンカップは18頭立ての予定だったが、ドゥレッツァの出走取消により17頭で施行された。この場合の三連複の総組み合わせ数は680通り。イチロー氏はそのうち、3番人気組み合わせである「8–14–15」(配当1,930円)を25点の購入で的中させている。  実際の買い目の金額配分は不明だが、仮にすべてを均等に100円ずつ購入した場合、購入金額は2,500円となり、収支は赤字である。仮にそうであったとしても、馬券的中には喜びがある。

読者コメント2  このレースは人気4頭の力がかなり抜けていた気がするので、3連複はかなり多くの人が当たっていると思います。 自分もドバイシーマの直線での追い込みぶりや最近のカランダガンのレース映像を見て「これは強い」と思ったので、カランダガン軸に買い、やはり3連複は当たりました。 世界ランク1位なのに4番人気だったのはある意味おいしかったですが、JCで外国馬が長年連対できなかった上に、ドバイシーマではダノンデサイルに負けたからかなあと。 自分は複勝・ワイド・3連複主体で、しかも人気馬を中心に馬券を買うチキンファンですが、当選確率を上げることで損失も減らせるし、少額でも的中するとうれしいので、そのラインを続けています。

読者コメント3  3連複は、1着から3着に入る馬3頭すべての「馬番の組み合わせ」を当てる馬券で、8番、5番、1番の3頭を選択した場合、買い目は馬番の小さいほうから並べ「1-5-8」と表記しますが、1着、2着、3着が「8番→5番→1番」の順に入っても的中です。1~3着の3頭を順番通りに当てる3連単に比べれば、3連複は当たりやすい馬券です。しかし3頭を選ぶ必要があるため、1着のみを当てる単勝や、1~2着の2頭を当てる馬連に比べ、難易度は高くなります。今回のレースの場合、680通りの3連複のパターンが考えられ、その中の25通りを購入されたとの事ですが、それでも「なかなか当たらない」確率です。イチローさんのはしゃぐ姿が目に浮かびます。

 

 以上、引用したコメントにあるように、3番人気組み合わせである「8–14–15」(配当1,930円)を25通りの購入のなかで的中させている場合、購入金額が2,500円かかるので赤字になってしまいます。もちろん、配当のあった馬券を2枚以上買っているなら話は別ですが、「しびれるような勝利」という表現には、やはりどうにも違和感が残ります。今回は頭抜けた人気馬がいたので、それほど極端に難しい組み合わせでもないようです。

 イチロー氏のコメントは、単なる一競馬ファンの個人的な興奮を伝えているのではなく、イベントのプロモーションとしての役割を帯びているのではないでしょうか。つまり、これは宣伝広告の、いわゆるヤラセなのです。

 今回、イチロー氏はジャパンCのプレゼンターを務め、JRA(日本中央競馬会)の「ICHIRO MEETS KEIBA」というコラボレーション企画の一環で来場されています。このような公式イベントのイメージキャラクターとして登場している場合、その発言には宣伝・脚色の要素が含まれるのが普通でしょう。

 私がこう書くと、「イチロー氏が嘘を言うわけがない」と言って怒るファンも多いと思います。宣伝やプロモーションを行うスポンサー企業としては、まさにその点が狙いであることは間違いありません。そして、これまでつねにイチロー氏は優秀な宣伝マンでした。

 もしイベントの顔であるイチロー氏が「負けた」と公言してしまうと、競馬のイメージとしてマイナスなので、ありえないのです。「当てた(勝った)」というポジティブな結果は、「競馬は楽しい」「自分もやってみよう」とファンを惹きつける最高の宣伝材料になります。

 また、「しびれますよ。あの興奮、なかなか味わえない」という重ねての表現は、競馬の魅力を最大限に高めるための脚色、あるいは演出であると考えられます。もしプラス収支がわずかであったとしても、その興奮をオーバーに表現することで、競馬ファンに共感を呼ぶメッセージとなるわけです。イチロー氏はサービスというか、労働をしているわけです。

 イチロー氏が来場するにあたり、JRA側や関係者(例:トークショーで共演した福永祐一調教師など)から、レースの傾向や注目馬に関する予備知識や専門的な見解が提供されていた可能性は高く、「指導があった」と考えるのが自然でしょう。「負けにくい」買い方として25通りという点数も、「当てに行く」ための非常に合理的な選択肢でした。

 「イチロー氏が選んだ25通り」という行動自体が、後の競馬番組や記事で話題になるため、ストーリー性を持たせるためのシナリオの一部だったと考えるのが妥当です。

 また、イチロー氏は自己資金で買ったとは一度も発言していませんので、競馬場側が用意した予算から支払われている可能性が高い、とも考えられます。宣伝を目的とした場合、当たることに重点を置いた資金が提供され、結果として「勝ちました」というコメントに繋がるケースも考えられます。そもそも、イチロー氏が実際に自分で窓口で購入したのかどうか、という点も、かなり疑問が残ります。ひょっとしたらそもそも自分で何も買っていないのかもしれません。

 イチロー氏のコメントは、「大スターのイチロー氏が自ら予想し、見事に的中させ、大きな興奮を味わった」という、イベントを盛り上げ、競馬の魅力を伝えるための総合的なプロモーションの一環であったことは疑う余地がないことだと思います。その陰では、イベントスタッフやプロモーションの出資もと(スポンサー)の準備と動きがあり、その意向が強く働いており、シナリオがあるのが当たり前です。

 イチロー氏は忠実に自分の仕事を果たしています。そこに手抜きはありません。この姿勢は、例えばユンケルの宣伝などにおける彼の、実に献身的な態度などにもみられる、いつものやり方です。誠実な広告塔であり、宣伝マンです。

 最初に述べた私の違和感は、たぶんそういうスポンサーによるプロモーションの構造から発しているのではないか、と考えられるのです。事実に宣伝を盛ってしまう、プロモーションのイメージ戦略というものは、いくら否定したくても、確かに存在しています。なぜならそれがプロモーションだからです。もちろんスポンサーの意に沿って報道している「日刊スポーツ」にも、スポンサーからプロモーション資金が流れているのでしょう。「馬娘」のヒットの影響などもありますが、競馬の世界は、最近はスターやタレントを使ったプロモーションがとても多いという印象です。

 来年は午年ですので、さらに宣伝は激化するかもしれません。

 

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【ジャパンC】イチロー氏が3連複的中「しびれますよ。あの興奮、なかなか味わえない」

11/30(日) 17:31配信 日刊スポーツ

 

<ジャパンC>◇30日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走17頭

 米大リーグで活躍したイチロー氏(52=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)が東京競馬場に来場した。ジャパンCのプレゼンターを務め、最終レース終了後には芝コースで行われたトークショーに出演した。

イチロー氏、ジャパンCトークショーでガッツポーズ

【写真】ジャパンCの馬券を当てガッツポーズするイチロー氏

 

 昨年に続いての来場で、「地鳴りのような声援にしびれました」と話した。この日のジャパンCの馬券を的中させたという「3連複で、25通り買いました。勝ちました。いやあ、しびれますよ。あの興奮、なかなか味わえない。自分の職業では味わったことがない。特別なものですね」と明かした。

 レースは1着カランダガン、2着マスカレードボール、3着ダノンデサイルで決着し、3連複の配当は1930円だった。

 

イチロー氏と騎手がジャパンCで握手

 

皆様のご健康をお祈りいたします。

   そして皆様に、すばらしい幸運や喜びがやってきますように。

      いつもブログを読んでくださり、ありがとうございます。