4 歌集『おまへに悪かつた』より、「五月の匂ひ」「あをさぎ」 | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  歌集『おまへに悪かつた』より、「五月の匂ひ」「あをさぎ」

 

 

 1年前の記事です。再掲します。

 私の歌集『おまへに悪かつた』をご紹介しています。

 

私の歌集『おまへに悪かつた』より、「五月の匂ひ」「あをさぎ」という一連の歌を引きます。こんなにチャーミングな歌が載っている歌集を読まずに威張っている歌人が多いのですが、疑問に思います。

 真正の批評家という存在は、もう日本にはいないのでしょうか。

 

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  五月の匂ひ   

       

 

肌にこまかきしま模様のあるやや若き栴檀と朝の挨拶かはす

 

まだらなる皮が剥けつつあるけやき葉を嗅げどけふも匂ひはあらず

 

咲くまへに百合の真似してうつむけるあづまいちげを目で撫づるなり

 

ほたるぶくろの真似ですとつひに答へたりまだ閉ぢてゐるあづまいちげは

 

すさまじき速さで池をとびまはるこしあきとんぼの黄の腹巻よ

 

黒きしつぽふりて飛ぶなりメスは黄にオス白く腹巻を光らせ

 

白き腹と黄いろき腹がつながりて池のみなもをまだぐるぐるす

 

ああ五月キャンパスに火薬学会が開かれ会員たちが闊歩す

 

        

 

  あをさぎ      

 

 

もう五月も終はつてしまふ池の面(も)にみどりの葉むら揺れてをりたり

 

いつもゐるあをさぎなれど今朝は羽揺すらずに立つ首を伸ばして

 

河骨(かうほね)の黄なるつぼみのやはらかさつぶさに語るわがあをさぎは

 

「あらまああれおきものみたいよ」と叫びつつ日傘の老女たちが近づく

 

「あなたもまあ鳥をごらんよ」と教へられまづ心より礼を述べたり

 

あをさぎに尋ねたる問ありにけり返事を待たずわれは去るなり

 

雨の日の龍神のかみしでの揺れわづかにてつひにお告げ得られず

 

かみしでの襞には小さき蚊がとまりじつと動かず快晴の日も

 

   

  

 

    皆様のご健康をお祈りいたします。

 

    そして皆様に、すばらしい幸運や喜びがやってきますように。

 

    いつもブログを読んでくださり、ありがとうございます。