全品半額――『おまへに悪かつた』より―― | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  全品半額――『おまへに悪かつた』より――

 

 ちょうど1年前に、私の歌集『おまへに悪かつた』から歌を引用した記事があります。この記事を再録します。

 この歌は、私の買い物の歌でルメは登場しません。

 しかし『おまへに悪かつた』には、愛犬ルメと散歩するときの歌がたくさん掲載されています。

 いまルメがいなくなって、とても寂しいです。ルメが恋しいです。

 

 私の歌集 『おまへに悪かつた』より、一連の歌「全品半額」をご紹介します。

 連作という手法で作られています。ただの連作ではなくて、「心象スケッチ」的な、また「意識の流れ」的な連作です。

 

 

                    全品半額              日置俊次    

 

 

「ALL半額」赤い札立つパン屋にてポテトサラダのサンドイッチ買ふ

 

定価のままレジにて請求されにけり「半額のはず」と青ざめて聞く

 

「サンドイッチは違ふのです」とレジがいふ店長か脂じみた中年

 

ALLとは全部ですよね。例外はないのです。まるで死と同じです

 

サンドは例外と決まつてるでせう。ここではさういふ決まりなんですよ

 

そんな決まりどうして客にわかるのです? 肩に雪のせたままの私に

 

誤解したんでせうがすでにレジ打つてしまつてますんで払つてください

 

レジ打つたらもう返品はできません。決まりは守つてもらはないとね……

 

その決まり誰がさうだと決めたのです? 私は誤解をしてをりません

 

レジだらうが火事だろうが騙されたなら断れる。私はさういふ決まりなんです

 

ただ胸が痛い雪の夜 他店にゆき定価で買ひたるサンド食むなり

 

 

            

皆様のご健康をお祈りいたします。

   そして皆様に、すばらしい幸運や喜びがやってきますように。

      いつもブログを読んでくださり、ありがとうございます。