血を吐く 日置俊次歌集『ノートル・ダムの椅子』より | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  血を吐く 日置俊次歌集『ノートル・ダムの椅子』より

 

 日置俊次歌集『ノートル・ダムの椅子』より、何首か引用します。

 

 

   血 を 吐 く

 

 

眼のやり場にこまる全裸の春の陽がわれに頬よせさびしいといふ

 

パンジーの花壇の奥に捨てられて静まりかへる小さきグローブ

 

さぼてんはけさのこひびと卓上に沙金のごとき春雨を聞く

 

華麗なるシンメトリーの穴ならべ干す靴下に春日降りつむ

 

うつむけば拍手わきたり生徒らにお辞儀してまた授業つづけぬ

 

ルノワールの裸婦の肌はふ七色のこもれびにぬれて教室に入る

 

撫でて摘むぽつちやりとした秋なすのむらさきの尻 雲にじませて

 

欄干と思ひこみたるペンキ屋が鬼のつのまで朱に染めてをり

 

ノースリーヴの肩に汗浮くあしたなり吊り広告に曼珠沙華群れ

 

つり革にのぞく少女の切れかけた生命線が吸ふ晩夏光

 

一輪車の少女ら三人(みたり)公園の像のペニスに触れてもどりぬ

 

しやぼん玉に映りまはりぬ白秋の江戸川ばたの紫烟草舎は

 

ブランドもののコートをまとふ生徒らの呪詛はとどかず大寒の空

 

前歯折れ血を吐きたれどわがことと思へぬ不思議道場にあり

 

 

   

 

 

   

 

皆様のご健康をお祈りいたします。

    そして皆様に、すばらしい幸運や喜びがやってきますように。

 

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