スパイス&ハーブで旅キッチン | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  スパイス&ハーブで旅キッチン

 

 フジナミコナの三冊目のコミックである『スパイス&ハーブで旅キッチン』を読みました。

 先の台湾を扱った二作は、台湾愛が噴火するような感じで、読んでいて浄化されていく気分でした。勢いがある分、内容は雑然としていて、それがまた台湾の夜市の雰囲気そのものでした。

 この二冊の本を開いて、いまも台湾を思い出しています。

 そのうえで読んだ今回の『スパイス&ハーブで旅キッチン』は、少し毛色の変わった本という印象です。

 コロナ禍で台湾に行けなくなった著者が、その欠落感を埋めるため、台湾的なハーブを使って台湾ぽい料理を作るという流れです。

 タイやパリで食べた料理の思い出や、その再現なども含まれています。

 あの噴火するような情熱は消えているので、物足りない気はするのですが、その分、内容は落ち着いていて整理整頓されています。

 料理のレシピ―もそうですが、絵も含めて手作り感満載で、ほっこりと癒されます。

 私は面白く読みました。ジーパイをはじめ、いろいろ料理を試してみたくなりました。

 ただ、どうしてもストーリー性が薄くなっているので、そこが面白くありません。もう一度、あの少しひりひりするような、そして愛情が爆発するような旅の醍醐味を描いてほしいと思います。

 コロナ禍が収まったら、もう一度台湾深部を探検してください。

 宜蘭県の羅東夜市、行きやすいのでぜひ行って、深く探索してください。ここだけで本が一冊できます。

 ついでに近くの礁渓で癒しの温泉巡りもしてください。温泉を楽しむなら、台北の北投もお忘れなく。

 フジナミ様、私の台湾小説『エメラルドの夜』『サファイアの夜明け』をお贈りしたいのですが、イーストプレスにお送りすればよろしいでしょうか。