ルメ論 | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  ルメ論

 

 

 例えば私の愛犬ルメについて、論文を書くとします。

 ルメとはどんな犬かということですね。

 まず模様ですが、これは長年いっしょに暮らしていても、はっきりと記憶できないのです。

 どこにどんな柄がどう広がっているのか、しっかり認識できていません。右手の甲のはしにぶちがあるとか、胸にミッキーマウスの形のぶちがあるとか、お腹がピンク色だとか、その程度はわかりますが、全体を把握していないのです。

 目の色も変幻自在で、どう描いていいのか困ります。

 横から見たときに、体の右側と左側がどう違うのか、これもうまく説明できません。

 つまり一匹のダルメシアンについて、私はわかったような顔をしていつも話をしていますが、本当はわかっていないのです。

 ルメ論を書くなら、様々な角度から細部を一つ一つ検証していかなければなりません。この細部が大切です。細かいところを、正確に整理しなければなりません。

 しかし、そういう細部とは別に、ルメはこういう子なんだという不変の核心のようなものは存在していると思います。私の中にはそういうルメの核心がはっきり存在しており、その核心も大切にして、論じていかなければならないと思います。

 細部だけで、すべてを決定してしまうこともまた、好ましくないですね。

 細部と全体、このバランスが重要だと思います。

 卒論を書く時も、こういう感覚で取り組むといいのではないかと思います。