ピンクのマスク | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

      ピンクのマスク

 

 2020年の初頭から、台湾は独自に情報を収集し、コロナ禍にいち早く対応しています。日本政府がまだぼーーーとしている時期です(今でもぼーーーとしていますが)。

 台湾政府の動きはほんとうに見事でした。

 デジタル化を進め、オードリー・タンが情報公開のためのアプリを作り出し、マスクを政府が買い上げて管理し、実名申告制で販売したので、マスク不足はなんとか解消しました。ただ、もともとマスクの色や柄が豊富な国ですので、それを選べるようにはなっていません。

 新型コロナウイルス対策本部の記者会見で、男の子がピンク色のマスクを付けたら女の子のようだと学校でからかわれたという報告がありました。

 すると、厚生労働大臣の陳時中氏をはじめ、政府の男性幹部が、2020年4月13日の記者会見で全員がピンク色のマスク姿で登場しました。

 この記者会見ののち、政府の各種機関や、企業、著名人などがSNS上のロゴをピンク色に変えました。

 「#ColorHasNoGender」「#顏色不分性別(色は性別を分けない)」のハッシュタグができて、ピンク色の大流行が起きました。

 ジェンダー差別にも真剣に取り組んでいる台湾ですが、この間の動きを見ていて、私もピンク色のマスクが欲しくなりました。ピンク色が実に魅力的に見えてきたのです。

 日本では、官房長官が「マスク不足は起こらない」と明言したので、私は信じてしまったのですが、いつまでもいつまでもスーパーや薬局のマスクの棚は、空っぽのままだったことを鮮明に覚えています。

 いつマスクが手に入るのかを聞いても、わかりませんと言われました。

 長い時間が過ぎていきました。

 そしてどんどん感染者が増えていきました。

 国民の声を吸い上げ、素早い対応と情報の透明化をうながし、ピンク色の概念も変えてしまうという、こういう台湾における行動を、日本の政治家はしたことがあるでしょうか。

 問題を隠し、人をだますことばかり考えているので、何も対策ができないのです。