【ウクライナ人コーシュチャ】その1
1泊2日のリヴィウ観光が終了した。夕飯を食べた後、ジョルジュ・ホテルに荷物を取りに行き、タクシーでリヴィウ駅へ。駅中の売店で食料調達。バナナとピロシキと2リットルの微炭酸のライムジュースと、ついでにビールを2本を購入。出発時間が21:58でまだ1時間近くあるので、取り合えずビールを飲みながら待合室の椅子に座り、時間まで待っていた。たくさんの人達でごった返す駅内をなんとなく見ながら、今回の丸2日間のリヴィウ旅行を思い返していた。短い日程だったが結構充実して楽しかったなと。私の正面にはとてつもなく大きな荷物を何段にも重ねてその荷物の上に座っているおばさんがいた。見た感じだと農家の人のような格好をしている。そしてその横には3〜5歳位の子供が3人遊んでいた。私が勝手に想像するに、ポーランドの田舎から食料調達にやってきた農家の一家なのではないのかと。この冬の寒い時期は収穫物が少ない。おそらく自分たちで栽培して貯蔵していた何らかの作物をリヴィウまで持ってきて、それを売るか直接交換するかで今置いてあるものを手に入れたのではないか。見た感じだとこの荷物の中身はジャガイモのようだった。子供が3人も居ると食事も大変だろう。主食のジャガイモはこの冬の間、子供を食べさす為に必要不可欠なものなのだな。などと考えつつ、しかし、これだけの量の荷物をどうやって列車に持ち込むのだろうかなどとあてもなく考えていたら、あっという間に1時間が経ってしまった。そそくさと荷物を背負いホームまで行くことに。ホームには既に列車が到着していた。私はチケットで列車の車両番号を確認し、10両目の列車の最終車両に乗り込む。私の2等寝台の部屋には既に先客が居た。1人は50歳位のおばさんでもう2人は若い男性であった。私は挨拶をして1段目のシートの下に荷物を入れさせてもらい、2段ベッドの上のシートに登る。何故かは知らないが若い男は無条件で上の席にされてしまうのだ。おばさんも含め女性とおじさん及びおじいさんは必ず下の席となる。確かに2段席はちょっと上り降りするのに辛い部分があるのでそれもよく分かるのだが、同じ料金なんだから一度位下の席で寝てみたいものだと思っていたら、列車が動き出した。時計を見たら21:58。定刻での発車だ。そしたら程なく車掌がチケットの確認と回収に来て、シーツ(7rpH)を配り始めた。私は2段席のおばさんの席の上に布団とシーツを敷き、取り合えず座っていたのだが、その間この部屋はシーンと静まり返っている。誰一人言葉を発しない。外人である私に話しかけないのはよく分かるのだが、同じウクライナ人同士一言くらい会話してもいいだろ〜!などと思いながら、何となく気まずい感じがし、これといってやる事もなかったので、通路に出てみると通路の端に休憩所のようなものがあるじゃないですか。おそらく列車の最終車両だからあるのだろうと、私はジュースを手にちょっと休憩しようと行ってみた。休憩所には小さな売店がありテーブルと椅子が置いてあった。売店の売り子以外に誰もいなかったので椅子に座って静かにジュースを飲んでいると、入口から明らかに酔っ払っている50歳位のおじさんが入ってきた。おじさんの顔は赤くなっており、足もフラフラとして片手にビールを持って売店の女の子にウォッカを注文している。私はこれは絡まれたらやっかいだなと思いつつ、視線を合わせないようにそ知らぬ顔でジュースを飲んでいたら、その酔っ払いオヤジが私の目の前の椅子にドカッ!と座るじゃないですか。そして日本人の私の顔がよほど珍しいのかマジマジと見つめ始める。私はあちゃー!と思いながら、しょうがないので日本人のアルカイックスマイルで微笑んでいたら、オヤジが何か言い出した。

写真は車内の様子です。




【ウクライナ人コーシュチャ】その2
※ここからの私と酔っ払いオヤジとの会話は片言のロシア語しか分からない私にとって多分?の内容です。オヤジは当然英語も一切分からないので、全てロシア語での会話となります。
オヤジ:「おまえはどこから来たんだ?」
わたし:「日本から。」
オヤジ:「おまえは日本人なのか?」
わたし:「そうです。」
オヤジ:「そーか!日本からよく来たな!」
    :「それで何しに来たんだ?仕事か旅行か?」
わたし:「旅行です。」
て、いうような感じで酔っ払いオヤジは、私がロシア語が分からないという事も構わずに話始めるじゃないですか。その間オヤジはウォッカを一気飲みしてビールを飲んでいる。私は片言のロシア語とニュアンスだけで適当に返しつつ、これを見て、これはロシアの諺で「ビールなしのヴォトカは金をどぶに捨てるのと同じ。」と言われている有名な禁じ手の飲み方じゃないか〜!などと思いつつ更に相手をしていたら、オヤジが急に乾杯するぞ!と言い出した。そしておぼつかない足取りで売店に行き、ショットのヴォッカ2杯を注文している。私はヤバイなっ!ビールは好きだがヴォッカはちょっと強すぎるぞ!などと思っている間もなく、オヤジはヴォッカとチョコバー?2本を奢ってくれた。オヤジは身振りでヴォッカを一気に飲んだら、このチョコバーを食べるんだぞっ!と示して、2人で乾杯!私はこれも国際交流だと思いながら一気に喉にヴォッカを流し込む。鼻から火が出る位に強い。そしてチョコバーをかじる。焼け付いた喉がちょっと癒される。それからもオヤジと会話?していると突然オヤジが政治的な話をし始めた。ブレジネフ、フルシチョフの時代はよかったが、ゴルバチョフで台無しになってしまった。お前はゴルバチョフは好きか?と聞いてきたので、日本とかアメリカとか西欧諸国では評価されている人だというような事を言った。それから次にオヤジが急にコーシュチャは好きか?と聞いてきた。はて?コーシュチャとは誰か?私は歴代のソビエト書記長、ロシア大統領の知っている限りの名前を考えて見たが、分からない。それとも誰かの愛称なのだろうか?などと考えてみたがそれらしい人が思いつかないので、オヤジにコーシュチャという人は知らない!というと、オヤジがもう一度コーシュチャは好きか?それとも好きじゃないのか?と何か寂しそうな顔をして聞いてくる。私は再度、コーシュチャは知らないんだ!と言ったら、オヤジは更に寂しそうな顔をしてしまった。私は理由が分からないので、取り合えず話題を変えようと、逆に今度は私からユシチェンコ大統領は好きかと聞いてみた。そしたらオヤジが突然、ビールを飲む手を休め、寂しそうな顔から一転、ニッコリしながら、いきなり自分の着ていた白いジャージのチャックを一気に引き下ろすじゃないですか。その下には真赤なTシャツ。オヤジは自慢げにTシャツを指差した。真赤なTシャツには白地で何か書いてある。多分、ユシチェンコ万歳!とでも書いてあるようだ。オヤジは熱烈なユシチェンコ支持者だった。オヤジはそれで気分をよくしたのか、また乾杯するぞ!と言い出した。私はもう十分だからいいですよ!と言ったのだが、酔っ払っているオヤジに分かる訳もなく、既にフラついた足取りで売店の女の子にヴォッカを注文していた。売店の女の子が先ほどと同じショットのコップに入れようとすると、オヤジは「ニェート!」と言って普通のコップを指差し、こちらに入れろと言っている。女の子がそちらの普通のコップにショット2杯分のヴォッカを注いだ所で手を止めると、オヤジは人差し指を1本突き立て、もう1杯分を入れろと言う。何と!ショット3杯分だ。女の子は呆れた顔をしながらもう1杯分を注いだ所で手元のヴォッカが無くなってしまい、箱からもう1本の新しいヴォッカを取り出して、もう一つのコップにショット3杯分のヴォッカを注ぐ。もちろんこれは私の分だ。ヤバイ!!こんなのを飲んだら足腰が立たなくなってしまうなと、一人引きつった笑顔をしている私の所にオヤジは容赦なくなみなみとコップいっぱいに入ったヴォッカとチョコバーを持って来るのであった。

写真は列車内のサモワールです。