キエフからリヴィウまで寝台列車で10時間。
2/20 18:20発→2/21 4:18着。
駅に到着し重い荷物を背負って外に出る。
雪の降りしきる薄暗いリヴィウの駅前は、私が想像していたウクライナの美しい古都というイメージからは程遠い寂れた田舎町という感じだった。

初めての寝台列車が慣れず寝ることの出来なかった私は、酷く疲れていた。取り合えず寒かったので、近くのキオスクで温かいチャーイを1杯(1rpH)。熱くて甘いチャーイを飲んで一息ついた所で考えてしまった。私は何でリヴィウになんかに来てしまったのだろうと・・・。そもそもリヴィウに来たいという理由は特になかったのだ。どちらかといえばウクライナのオデッサやヤルタの方に興味があった。それなのに何で来てしまったかといえば、この冬の雪の降る寒い時期に1人で海沿いの街なんか行ったら「津軽海峡冬景色」じゃあるまいし、寂し過ぎるだろ!と思ってしまい、消去法的選択で内陸のリヴィウ行きをなんとなく決めて、バタバタと切符を購入し列車に乗り込んだのだった。そんな訳で実際にリヴィウに到着し、来た理由がこれかと思い付いて考えてしまったのだった。いったいこの世の中に10時間もかけてこんな理由でリヴィウに来る人間が果たして他にいるのだろうか?もしかして私はバカなんじゃないか?などと取りとめもないことを更に考えていたら、寒くなってきて急に現実的な考えに変わった。今日のホテルを探さなきゃと・・・。
そんな訳でガイドブックで確認し、立地と金額からジョルジュ・ホテルに泊まる事に決めて、タクシーに乗り込んだのであった。

ちなみに写真はリノック広場付近の街角のマリアです。




まだ薄暗い中、15分位でジョルジュ・ホテルに到着。ホテルは大通り沿いの立派なホテルであった。
中に入ってびっくり!古いが豪華なホテルです。一瞬、もしかして宿泊料金高いんじゃないかっ?と思って、フロントの渋いオジサンに聞いたら、トイレ、シャワー別の部屋であれば1泊 153rpH(\\3,600位)との事。キエフなんかに比べたら格安じゃないですか!そのまま即決で1泊する事に。部屋は2階の19号室。重い荷物を背負って2階への階段を登る。(写真はその時に撮ったものです。)何か変わった構造だな〜!と思いつつ部屋に入り、荷物を置いて、取り合えずシャワーを浴びる事に。そして廊下に出てシャワー室を探していて、なるほど!と思いました。この建物は階段を中心として円形構造となっており、その円形に沿って部屋が並んでいる。建物の概観は普通の角ばった建物なのに中が円形構造なんておもしろいな!などと思いつつ、はて?どこかでこんなのを見た事があるな?と考えていたら、シャワー室を見つけられず2周ほど廊下を回ってしまいました。やっと見つけて熱いシャワーを浴びていたら、はっ!と思いつきました。そう言えば、ロシアのシュレメチュボ空港が円形だったな!と・・・。他のヨーロッパ圏の国々については分からないが、私自身あまりこういった円形構造の建物にはお目にかかった事がない。ロシア、ウクライナにおいてこの短期間で2箇所もあったという事は、実際にはもっとたくさん存在するのかもしれない。もしかしたらロシア、ウクライナ人の民族的潜在意識に円形に対する憧憬のようなものがあるのか?それともタタール・モンゴルに征服されていた時代に騎馬民族が使っていたパオの遠い遠い名残りなのかな?とか疲れて睡眠不足の頭はくだらない事を考え始め、ついには円形構造は行き止まりがないから、ついつい歩き続けてしまうんだよな〜。そういえばここでも2周してしまったが、シュレメチュボ空港でも意味もなく何周も歩き続けてしまった。人は前を向いて歩き続けるのが好きなんだ!例えそれが同じ所をグルグル回るメビウスのリングのようであっても、行き止まりで後ろを振り返るよりはマシなんだと。しかし、今回の私の旅は人生を振り返った上で未来を見つめ直す旅でなくてはならないんだから、今までのようにただ漠然と前進しているだけではダメなんだ!などと、それこそこのジョルジュ・ホテルの廊下をグルグル回るように私の疲れた頭は終わりのないくだらない思考を繰り返すのであった。結果、考える事にも疲れ果ててしまった私は、早々にシャワーを切り上げ部屋に戻り、倒れるように寝てしまった訳であった。Zzz・・・!




ジョルジュ・ホテル2階19号室。シングルと言ったのに何故かツインだった。




起きたらPM12:00を過ぎていた。どうやら6時間位寝てしまったらしい。しかし頭はスッキリ、ついでにお腹も減った。やっぱり人はしっかり寝て、食べないとダメだよなっ!と思い、朝食(昼食?)を食べに外に出る事に。階段を降りて正面玄関を抜けると、今朝まで降っていた雪はどこえやら、日差しも眩しいピーカンの快晴じゃないですか!そしてリィビウの街並み。まさに中世の美しい古都でした・・・。今朝はまだ暗く雪が降っていて駅前しか見ていなかったからという事もあり、寂れた田舎町という認識しか持てませんでしたが(疲れていたという事もありますが)、燦燦と輝く太陽の下のリヴィウの中心部の街並みは、美しい教会の尖塔が見渡せ、石畳に沿って調和のとれた瀟洒な建物が立ち並ぶ、まさに私がイメージしていた(車さえなければ・・・)以上のヨーロッパの中世の美しい街並みそのままでした。私は始めてリヴィウに来てヨカッタ!と思い、取り合えずこの美しい街並みを見ながら食堂でも探そうと、意気揚々と歩き出した訳です。

ちなみに写真は、スヴァーボーディ大通り沿いの公園。




晴天の気持ちのよい日差しの下、ミツケヴィッチ像を見てから適当に街を散策。途中、ピザ屋で食事をする事に。焼きたての大きなピザとビール2本で20rpH(\\500位)。キエフより物価が安い感じだ。それから東欧のピザを生まれて初めて食べたが、日本のピザより遥かに旨い。(これから癖になり、キエフでもブカレストでもちょくちょく食べる事に)ちょっとほろ酔いでスヴァーボーディ大通りのシェフチェンコ像を見てから、北に向かいオペラ・バレエ劇場を見てトラムの奔るトルゴヴァ通りに出ると、市場を発見。結構大きな市場で衣料品から日用品、食料品と何でも売っている。大きな建物の中にある食料品の市場(キエフのペッサラプスキー市場みたいな)に入ってみると色々な食料品が売っていた。なんか知らないがこういう市場に来るとすごく落ち着く。特に買う物がある訳ではないのだが、お店の人達と身振り手振りでやり取りしながら、試食したり、話したりしていると、癒される気がしてくる。そういえばウクライナに来てからロシア語が話せないという事もあり、人とろくに会話をしていないな〜と思った。そして人恋しくなっている自分に気付き、ちょっと寂しくなる。それから市場を出て、アルメニア教会、民芸品マーケットを見てリノック広場に出る。リノック広場は工事中みたいで、石畳が全て剥がされ土が掘り返されていて泥だらけとなっていた。折角の美しい街並みが台無しじゃないか!などと、ちょっと残念に思いながら、ドミニカ聖堂を見て南に下り、聖アンドレイ教会に向かう。ここまできて、あれっ!と思った。今日は軽く散策するつもりでいたのだが、もしかしてリヴィウの見所をあらかた見てしまったのではないかと。ここまで全て歩きで見て回っていたのだがリヴィウの街は思ったよりもずいぶん小さい街のようだ。既に太陽は西に沈みかけ柔らかい夕方の残照を美しい街並みに注いでいた。なにか1枚の名画でも見ているかのように幻想的なその風景は、自分が今どこに居るのかという事を一瞬忘れさせる。そんな美しい風景に身を置きつつ、ちょっと考えました。リヴィウという街は個々に見所があるのではなく(もちろん、いくつかの教会や見所もあるのだが)、街全体の統一感というか一体感こそが本当の見所なのではないのかと!そんな事を考えつつ、ほとんど沈みかけた夕日の弱い残照を背中に受け、足早に聖アンドレイ教会に向かうのでありました。

写真は壮麗で重厚なオペラ・バレエ劇場。

ちなみにこの劇場は、シベリア抑留で連行された日本人が建設した劇場です。




多分、アルメニア教会。




街中のキリスト像。
なんかリヴィウの人達の悲しみを一身に引き受けているかのようで辛そうでした。




賑わいのある、民芸品マーケット。




工事中のリノック広場。
美しい石畳が掘り返されておりました・・・残念。




ドミニカ聖堂。




夕日の残照が幻想的な雰囲気を醸し出している、リノック広場。