今日は、さいたま新都心駅まで行って、映画「PERFECT DAYS」を観てきた。
以前から気になっていた映画なのだが、いつも行ってた地元の映画館では上映してなかったので、行きあぐねていたのだが、やっぱり気になってしまって、鑑賞してきた。
感想としては、一言、いい映画だった。
「ベルリン天使の詩」で代表されるドイツの巨匠ヴィム•ベンダース監督の最新作。カンヌ国際映画祭で主演の役所広司が男優賞を受賞した事で一躍有名になった映画だ。
多分、賛否の分かれる映画なんだと思う。
なんせ、主演である平山役の役所広司が、ほぼ喋らない。
そして、60代のオヤジの日常を淡々と映すだけで終わり、盛り上がりも、ドラマティックな展開も一切無いままに終わる。
多分、この映画は大人の映画なんだと思う。
ある程度、人生経験を経た人で無いと、この静かな短調さに耐えられない。
52歳の自分は、途中で泣いた。
主人公の平山が言葉にしなくても、どう思っているのかが、何となく分かったからだ。
そして、平山は心底、心持ちの優しい人なんだと感心した。
諦念(ていねん)。
そんな言葉がある。あきらめと思われるが、実はそうじゃ無くて、「あきらかにみる」のが本当の意味らしい。
平山の視線は、誰に対しても正視眼でブレがない。
アナログのフィルムカメラで木漏れ日を写すカメラのように。
60歳を超えた人生経験を経た人が正視眼を保ててることは少ない。
人生経験を経る事は、少なからず心が歪み、世の中を色眼鏡で視てしまうと言う事だから。
特に公衆トイレの清掃を仕事としている平山のような人間に対して、世間の視線は恐ろしく冷たい。
それでも腐らず、全てを受け止めて、短調な毎日の繰り返しの中で、小さな楽しみや光を見つけながら生きている平山と言う人間は、悟りを開こうとしている、現代の修行僧のような気がした。
そして、翻って、自分の生き方を見つめてみた。
環境は平山とほぼ同じ感じなのだが、心持ちも、優しさも、深さもまるで違っている自分は、まだまだ子供だった。
だが、この平山の生き方のベクトルは、自分の望む生き方と何となく近いような気がした。
自分の人生での『PERFECT DAYS』は、まだまだ遠い先だけど、日々の暮らしの中で倦まず弛まず明るい光を見つめながら、生きて行こう思わせる、いい映画だった。
そんな感傷に更けながら、今日もやっぱり乾杯🍻