去年4月に転職して、この製薬会社の工場で働き始めた。そして、今回で70回目の宿直となる。


しかし、それから3日に1回宿直勤務をしてるのだが、シャワーも浴びられず、仮眠用の折り畳みベッドのマットレスはダニだらけだし、夜中に警報が上がるし、宿泊の居住環境としては、最悪だと常々思っていたのだが、今回の能登半島地震の避難所の様子を見て、水やお茶やコーヒーがタダで飲める給茶器があり、トイレはいつでも利用でき、部屋も明るく、エアコンが使えるこの環境は、避難所よりもはるかに恵まれた環境なんだと、今回つくづく思った。

寒空の下、外点検をしてたら、水道が凍らない様に水を流しっぱなしていた蛇口が寒さで凍って氷柱になっていた。



水の流れが途切れ、氷柱だけが残る。

夕方になって雪が降り出した。今年の初雪だ。

この埼玉よりも更に寒い北陸の能登半島の避難所は、どんな寒さなのだろうか。

人の命が突然失われた。亡くなった人も勿論、無念だっただろうが、亡くなった人と繋がりを持っていた人達の方も、突然、繋がりが断ち切られ、きっと、茫然としてしまったことだろう。

この世の理不尽、容赦ない非情、壮絶な現実を突然、突きつけられた残された人達に去来する思いは、怒り、喪失、無常、悲しみ••言い表せない苦しい色々な感情が巡るめく心を掻きむしるのだろう。

そう言った、思いは一体、何処に向かえば癒されるのだろうか。

凍ってしまった蛇口の水のように、途切れてしまった水も、凍ってしまった氷柱も、太陽が昇って暖かくなれば、また水は流れ、氷柱は溶けて無くなる。

残された人達の思いも、いつか凍ってしまった心が温まり、少しづつでも流れてくれる事をただ願うばかりだ。