純達は場所取りをする為に人山をかき分けて目的の祭壇広場の近くまでやって来た。
ガヤガヤ、ザワザワと待ちわびる人達が沢山いて実夜の踊る祭壇前になかなか近づけない。
「わ〜人がいっぱいいる〜。想像以上よ……。何処か実夜がよく見えるとこ空いてないかな〜。」
「今年は数年ぶりに天皇陛下ご一家も総理大臣達も見に来るし、そのせいもあるんじゃないか?ウチの連中大忙しだよ。」
「純じゅんは何もせんでええの〜?」
「俺は邪魔だって追い出された。」
「へー。……って由菜ちゃんビデオカメラまで用意しとる?!」
「当たり前よ!大事な親友の大事な日だもの!記念に撮っておかなきゃ♪」
「由菜っちの身長じゃ人の頭しか撮れへんやろ。貸しいや、俺が撮ったる。」
「あら、優しいのね♡ありがと♪」
「ふふふ♡惚れた?」
「あはは♡惚れない。」
「だよな〜♡」
「あったりまえでしょ?バカな冗談言ってないでカメラ係はちゃんとカメラ撮影する事だけに集中してちょうだい!実夜が出ちゃう!!」
「ひでぇ……。」
由菜は戒斗をギロリと睨んだ。
「いえ、何でもないです……。」
その時辺りに笛の音や鈴の音、太鼓の音が鳴り響いてきた。
「お、始まった!」
「お!お!来たで!来た来た!」
「実夜〜♡」
実夜は姫巫女として犬神さま役の舞子を先導にして現れた。どことなく緊張の色がうかがえる。
天皇陛下、皇后陛下、次女のさと子さま、次男の彦仁さま、そして歴代の首相経験者の皆様と現総理大臣達は立ち上がり拍手をしながら和やかな様子でその姿を目でおっている。
「実夜綺麗……♡」
実夜は祭壇の前に立つと祈り始めた。
『遂にこの時が来た……ー』
「?……誰?」
突然聞こえてきた声に戸惑う実夜だが、音楽が鳴り出したのでそのまま舞い始めた。
「……様子がおかしい……。」
亮介がボソリと言った。
「え?」
「なんか永井の様子がおかしい……!」
「実夜……ー?」
実夜の舞いが終わると、あたり中から盛大な拍手が鳴り響いた。
「すごーい!実夜かっこいい!」
実夜は観客に挨拶をすると、また祭壇へ祈り始めた。
『時は来たれり……ー』
「!誰なの?!」
すると突然ゴゴゴゴゴ……と地割れのような地鳴りが聞こえてきて、震度7以上はあるのではないかというとても大きな揺れを観ている全員が体に感じた。しかし不思議な事に木々や建物は揺れてる気配はない。辺りはザワザワと騒ぎ出す。
その時、辺りを金色の光が駆け抜ける。その光は実夜の元に集まり、実夜はバッと眩しい光に包まれた。
「実夜!」
「あ……っ!」
突然光に飲み込まれて実夜が消える。辺りは「神隠しだ!」「いや、UFOに拐われたんだ!」と大きく騒ぎ立てる。
「永井!」
「どうしよう?!実夜……消えちゃった……!!」
「っ!!……探すんだよ!」
純は自分にもまるで言い聞かせているように言った。
「どこを?!だって目の前で消えちゃったのに!!」
「いいからとにかく探すんだ!どこでもいい!実夜を探すんだ!!」
「……うん!」
「せやな!見つけてやらんと!」
純達は手分けして実夜を探そうと、騒ぎ集まる人山を通り抜けて、辺りをくまなく、また神社を出てその周りや近辺をも走って探し始めた。