前記事の続きで婦人科疾患の治療をしたときの話です。

 

タイトルの字数の都合で入れられなかったんですけど、どうしてもこの記事で皆さんに知って頂きたいキーワードは、

 

「膣上部切断術」

 

…という、手術の術式についてです。

 

どうしても子宮を摘出しなくちゃならなくなったら、こういう手術方式もあることを思い出してください。

 

内視鏡か開腹か、というのの違いは皆さんご存知かと思いますが、お腹をどう切るかではなく子宮をどこまで切るかの違いです。

 

術後の人生のQOLに大きく関わることなのに、体験談や情報が少なく、選択肢があることを知らないまま…というよりは、知っておいて損はないと思います。

 

実際に私はその術式でやって頂いたので、今回の一連の記事はそのレポートです。

 

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子宮全摘、卵巣摘出のリスクを考える

 

手術する病院はもうその日のうちに決まりました。

先生が病院を2つ挙げてくださり、そこから選択。

隣県だから遠かったけど先生が「ここは名外科医がいるから」とプッシュされたので、O病院に決定(あー同じO病院でもこないだ記事に書いたO病院とは全く別な病院です)。

その場で電話してくださり、すぐにコトが決まりました。

は…速いッ!!

 

 

で、そこの初診予約の日までに、その間「子宮をどうするか」で悩みました。

 

当時すでにもういいオバサンだから今後結婚して子どもってのはあり得ないので、言ってみればもはや「愛着」の問題ですな。

 

このままじゃ仕事もできない→生活できないから根治してしまわないと…っていう焦りもあったし。

 

それと不安だったのは、子宮や卵巣を摘出してしまうことにはどんなリスクがあるのかということ。

 

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ちなみに手塚治虫先生のマンガ「ブラック・ジャック」では、BJ先生の彼女さんが子宮がんでまだ若いのにBJ先生に子宮・卵巣両方を全摘してもらい、女性であることを諦め恋も終わったというエピソードがありましたが、これだけは当てにしないでください(汗)。

 

マンガが描かれた当時が70’sで、なにぶんもう半世紀前。当時は子宮からもホルモンが出ているという認識だったらしく、作中でそういう図が描かれてますが…。

子宮を全摘しても、子宮から女性ホルモンが出ているわけではないので、べつに男性的・中性的になるわけではありません。

子宮に関して言えばどなたもお分かりの通りベビーの問題、だけと言っていいでしょう。

(後述する術式の違いで、後遺症などに違いが出るわけですが)

 

卵巣からは女性ホルモンが出てはいますが、仮に卵巣を2つとも摘出したとしてもマンガのように男性として生きなければならないということはないですよね(^^;;

女性であること・あるいは男性であることは肉体のカタチではなく生き方であると、焦げ猫は考えています。

 

(問題のエピソードはコレ)

Kindle版ブラック・ジャック 第2巻 第7話 「めぐり会い」↓

 

 

 

むしろそうなった時(卵巣を摘出した場合)、心配なのは女性ホルモンが出なくなることにより更年期障害のような症状が出ることや、骨粗鬆症になるリスクがあることです。

それに対しても、今はホルモン療法があります

 

卵巣1個残したら、その卵巣が後日の検診でもちゃんと頑張ってくれてることが確認できれば大丈夫。

実際、私の場合も残りの卵巣は手術から更年期障害が出るまで実に8年、よく頑張ってくれました。

 

ただ、1つ残してもその残した卵巣しだいですので、自分の体調にはいつも気をつけていてくださいね。

 

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子宮温存できるケースもあるけれど妊孕性や保険適応に注意

 

肝心の子宮ですが…、

 

まず温存か、いわゆる全摘かでリスクもメリットもデメリットも違ってきますよね。

病巣部がどうなっているかにより選べない場合を除いた子宮筋腫や子宮体がんの場合をベースに以下ポピュラー(?)な方法を挙げてみました。

 

子宮筋腫の場合は、なにもまるっと全摘しなくても、筋腫を狙い撃ちするか、筋腫をそれ以上大きくさせないホルモン療法をするかなど、いろいろ子宮温存の方法はあります。

 

ざっくりしか書きませんがネットでで検索すれば詳しい情報が出てきます。

どの方法もメリット・デメリットがあり、筋腫を取りきれないとか、ベビ待ちの場合には向かない方法とかもあります。

 

 

子宮温存の方法

 

筋腫核出術

…筋腫だけを狙って切除する外科手術

 

UAE

…カテーテルでアクセスし、子宮動脈の一部を塞いで筋腫に栄養が行かなくなるようにする方法。兵糧攻め。

 

FUS

…超音波で筋腫を狙い撃ちして焼いてしまう方法。

保険適応外。

 

ミレーナ

…ホルモン剤が少しずつ出てくる仕組みになっている避妊リング。

避妊目的だと自費だが過多月経に使う場合は保険適応となる。

 

 

…これらの方法の中で、私のような「びまん性(全体がそうなる)」の子宮腺筋症では、病巣を小さくする方法はありません。

子宮腺筋症でも、部分的にふくれる結節性の場合はそこだけ切ることもできるかもしれないらしいので、診断が出るときに確認してくださいね)

 

唯一、ミレーナは「子宮温存したくて生理辛くないようにしたければ、一応コレを使う手もあるけど…」と先生が教えてくださいましたが、先生的にはやはり全摘がオススメのようでした。

 

 

家帰ってネットで「ミレーナ」について調べてたら、かなり評判が悪いんですよね…。

当時私がよく見たのは女性向けの2ちゃんねる的な書き込み掲示板で、ミレーナは避妊目的で使っている人が多い印象でしたが、脱落したとか少量出血がずっと続くようになったとか(それじゃ過多月経対策に使うのにあんまり意味ないですよね)って声がすごく多かったんです。

 

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子宮全摘しかない場合にココに気をつけて!

 

でね、たまたまその2ちゃんねるっぽい書き込み掲示板内をネットサーフィン的に見てて…(今はネットサーフィンって死語だよ死語・笑)、

 

子宮全摘したら膣の奥のコリコリしたやつが無くなって性感が落ちたんですけど、一緒に取られちゃったってことですかね!?

 

…みたいなスレがあったんですよ。

 

ん?なんだそれは?

…と思って読んでみると、子宮全摘手術後に、その「奥のコリコリ」が無くなったことによってご主人との営みの愉しみが半減してしまいガッカリされたというお話でした。

つまり、子宮全摘のときにコリコリも一緒にとられちゃったというのが後々生活に影響したという話なので、これはちょっと気になる…と思い自分でもググってみました。

 

 

私自身は「奥のコリコリ?タンポン入れるときに当たるアレか…」くらいにしか思っていなかったのですが、それが「子宮頸部」というものです。(妊娠中子宮を塞いでおくなどの役割もありますがここでは割愛します)

皆さん子宮頸がんの検査は子宮体がん(子宮本体にできるがん)の検査以上にカジュアルにやると思いますので周知かと。

子宮頸がんのワクチン(原因となりやすいヒトパピローマウイルスのワクチン)打ったほうがいいの?というのが話題になることもありますね。

 

 

コレが無くなるとどうなるか。

 

性感という部分で、女性によってはさっきの書き込みの方のように性感帯がひとつ減る…パートナーの男性にとっても、人によってはあのコリコリに当たるのが好きなんだという人もいるようです。

 

 

しかしそれより重大なのが…、 

 

どうやら、頸部も含めてまるっと全摘してしまうと、内臓を支える筋肉とかの絡みで尿モレしやすくなるリスクが高まるというのです。

さらに、多くの場合はあとあとの話ですが、骨盤臓器脱といって、腸や膀胱が下がってきて膣からコンニチハ…という考えたくない現象にもなりやすくなると知りました。

 

当時の情報ソース元がなかなか見つからないので鵜呑みにしないでほしいのですが、要は子宮を頸部も含めて全摘する方がいいのか、頸部は残したほうがいいのか考える必要があるということです。

 

頸部に病巣が至っていた場合は単純全摘一択ですが、そうでなく頸部を残したい人には「子宮膣上部切断術(子宮頸部切断術)」という方法があります。

 

この後は、頸部も全部取る手術を「単純全摘術」と表記しますです。

 

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子宮膣上部切断術(子宮頸部切断術)のメリットとデメリット

 

単純全摘に比べてのこの方式のメリットは、

 

・切らなければならないパーツが少ない、傷つけるリスクの高いパーツも少ない(単純全摘では切らなければならない、内臓を支える部分に影響が少ない)

 

・頸部が残ること自体も支えになる

 

・ので、あとあとの尿モレや臓器脱を起こしにくい

 

・術後の回復が速い

 

・そこが性感帯の人もいるので、性生活に影響が出ないこと

 

…などなど。

 

 

当時やっと見つけた記事が、古いけどまだありましたので情報ソース元としてリンク貼っておきます↓

関東連合産科婦人科学会

https://jsog-k.jp/journal/lfx-journal_detail-id-18292.htm

 

 

デメリットは、

 

どうせ取るならなんで全部取らないの?頸部残したら、そこがいずれがんになる可能性が残るんだよ?

 

…という考え方のお医者さんが日本ではほとんどだということ。

 

なので、膣上部切断術を望んでもやってもらえるかどうかっていうのがまずハードルなんですよね。

 

それと確かにそのとおり、子宮頸がんのリスクは残るので、頚がんの検診には行き続けなければならないということ。

(あっヤベぇそう言っときながらここ数年行ってないわ)

 

しかし8年経った今、積極的に行なっている病院もできているようで、当時とはやはり状況が変わりつつあるのかなと今回改めて調べてみて感じました。

 

 

以下、引用です↓

 

子宮全摘術と子宮膣上部切断術(子宮頸部切断術)

子宮は、子宮体部(上の部分)と子宮頸部(下の部分)からなる臓器です。子宮は子宮体部と子宮頸部はそれぞれ異なる機能を持っています。双方がそれぞれ上手く働いて妊娠、分娩が順調に運ぶようにできています。
  
子宮筋腫、子宮腺筋症は、子宮体部にできることがほとんどであり、子宮頸部にできることは稀です。これに対して、子宮がんは、頸部と体部にそれぞれ別な性質のがん(子宮頸部には子宮がん:多くは扁平上皮がん、子宮体がん:多くは腺がん)が発生します。

 

膣にできる傷の有無に違い

子宮腟上部切断術は、子宮頸部を温存し、子宮体部を摘出する手術です。これに対して、子宮全摘術は文字通り子宮全体(頸部と体部)を摘出する手術です。子宮全摘術においては、膣をぐるりと一周切ることで子宮から膣を分離します。すなわち膣には傷ができます。

この傷から出血があると、血腫(血のかたまり)ができることがあり、そうなると治療が遅れます。そうでなくても、膣の傷が修復され元の状態に戻るには、少なくとも2、3ヶ月かかります。その間は、機械的な刺激(性交)は避ける必要があります。

もし、膣の傷が裂けると(膣断端離解)と、稀ではありますがその奥の腹腔内にある腸官が膣から外に出てくることもあり得ます。血腫や断端離解は、従来の開腹手術や経腟式手術においても起こり得るとされていましたので、腹腔鏡下手術に特別多いというわけでもありません。

これに対して、子宮膣上部切断術では膣には傷ができませんので、傷の治り方を気に掛ける必要はありません。

 

尿管損傷のリスクに違い

肝臓から膀胱まで尿を運ぶ尿管という左右一対の管は、膣のすぐ脇を通っており、膣を切断する子宮全摘術においては、腹腔鏡下手術に限らず、開腹手術や経腟式手術においても尿管損傷の合併症に気をつける必要があります。

これに対して、膣を切らない子宮膣上部切断術では、尿管損傷のリスクは子宮全摘術に比べずっと低いとされています。

 

子宮膣上部切断術を勧める理由

前途のように、子宮は二つの異なった機能を持つ臓器が合わさった臓器です。子宮頸部に異常がない場合、それを摘出する必要はないといえます。子宮は女性の象徴であると考える向きもあります。子宮を摘出するということは、女性の象徴が失われるとの意味も含まれるとすれば、強い喪失感が伴います。子宮膣上部切断術は、子宮を全てなくすことはないという点では、喪失感は比較的軽く済むのかもしれません。
  
以上のような理由により、当院では悪性腫瘍(がん)ではない、子宮頸部に異常がない、子宮全摘の希望が強くないということを条件に、子宮膣上部切断術をお勧めしています。

 

(「辻仲病院柏の葉」様のHPから引用)

 

 

…とまぁ、「そもそも子宮を温存するか、取ってしまうか」を決めたあとは、「単純全摘 or  膣上部切断術」のどちらがいいかを決めることも考えといたほうがいいってことです。

 

なにも希望を言わないと、少なくともびまん性子宮腺筋症の場合など、「全摘」と言ったら多くの病院ではデフォで単純全摘です。

 

 

ちなみに私ですが、結局子宮も摘出を決意

膣上部切断術を強く望み、紹介先のO病院の執刀医の先生の診察で希望を伝えると…、

 

そこまでご自分でメリット・デメリットよく調べて分かっておられるなら、そうしましょう

 

…と、サラッと受け容れてもらえました!

 

話すときめっちゃ緊張しましたよ、ギリギリまで言えなかったし。

非常に紳士的で優しそうな先生だったにも関わらずです。

こんなマイナーな術式を患者の方から希望するなんて、どう思われるだろうか…と。

膣上部切断術」についてはそれほど情報が少なかったのです。

 

ただでさえ、自分の症状をネットとかで調べて、アレじゃないですかコレじゃないですかって相談する患者さん(私のようなヤツ)を嫌がる医師は多いし、ましてや外科手術の術式に口を出すなんて…。

 

でも、これが大事なことなんですよ。

 

このブログを通して口酸っぱくして言いたいのは、後悔しないためにベストな医療を受けたいなら、患者も病識と勇気を持たないとってこと。

それを頭っから否定せず、検査するなり説明するなり、医療スタッフ側もそういう柔軟な人が増えてほしいな、と今も切に願っています。

 

 

ちなみに、単純全摘のデメリットとして尿モレや臓器脱のことは先生も同意しておられました。

柔軟な先生でえがったぁ〜。

 

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手術前に必ず書類確認を!

 

次に入院生活と手術の記事を書く前に、これも大事なことなので時系列前後するけど書いときます!

 

手術の同意書とか、オペ室に持ち込む指示書みたいなのとか、術式が書いてあって患者がサインする書類が幾つかあるのですが…、

 

そのうち1つに「単純子宮全摘」と書いてありました。

 

あっぶねー。

膣上部切断術」と、書き直してもらってからサインしました。

 

事務的なことだけど、コレも自己防衛ですから、気をつけてくださいね!

 

 

 

それと本来は身内の付き添いが必要なレベルの手術だったんですが、両親はもう親父が自宅で寝たきりに近くてオカンはそれに付きっきりだし、姉や弟は遠いしみんな自分の仕事も育児も忙しい…で、誰に来てもらえばいいか困りました。

 

唯一、学校休めば来れそうな娘はまだ中学生ですがって話したら、

 

ああそりゃまだかわいそうだ…

 

と、病院のスタッフさん。

 

手術中に命が危ぶまれる何かが起きたときに、その場で処置を決定しなければならず、場合によっては独りで親の死に目に遭うことになるのです。

 

結局、特例的に友人でオッケーしてもらいました。

話してみるもんですね。

 

手術を受けることになったら、その辺を誰にしてもらうのかも(付き添いとは別に、身元保証人もあります)、根回ししといた方がいいでしょう。

 

それを強く再認識したのは、この闘病マンガです。↓

「末期がんでも元気です」

 

 

 

 

末期の大腸がんの漫画家さんのコミックエッセイですが、ご家庭に事情があり「知らせてほしくない」、でも身元保証人などを旦那さん側のご家族にお願いするのにとても葛藤された描写があります。

でも基本ご本人が非常にポジティブで冷静で、入院生活に役立つ情報も書かれているので、婦人科の疾患ではないけれど読んでてためになるな〜と思った1冊です。

 

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この記事どっかで見たなという人へ

 

ネタバレ(?)で自分の首を絞めるコトになるんですが、今回の話題は実は当時、某病院検索サイトに投稿したことがあるんですよ。

「アレ書いたの焦げ猫さんですか」

って分かっちゃう人もいるかもなぁ。

 

まぁ、誰かのパクりじゃなく自分の経験なので、「別のサイトに同じようなこと書いてあるけど」と既視感を感じた方、こちらは本人によるリライトバージョンですので悪しからず…。

あちらは確か文字数制限があったのでかなりはしょって書いてます。

この病気で会社クビになったっていうのも次の次の記事で詳しく書こうと思います。

 

でも、治療に関してはいい判断をしたなと、今でも自分で思っています!

 

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次回、入院・手術編です!

 

ご挨拶記事はこちら→「このブログへ来て頂いた方へご挨拶!」

 

焦げ猫病気百貨店」トップ記事はこちら→「焦げ猫病気百貨店へ、いらっしゃいませ〜」

 

この話題の最初の記事はこちら→「子宮腺筋症と卵巣嚢腫のお話 1〜発見・診断編」

 

この話題の次の記事はこちら→「子宮腺筋症と卵巣嚢腫のお話 3〜入院生活」

 

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オススメ図書

 

 

 

 

 

 

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