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2003年1月に角川書店より単行本として刊行された黒岩氏最後
のエッセイ集の文庫化。貪欲で癇癪もちの作者が約80年にわた
る人生を衒うことなく語ったエッセイ集。死期をさとった静溢が全
文章からただよっている。戦時中奇跡的に満州から本国へ帰還
したことに始まり、若き日の肉体を蝕む病魔と梅田の病院で味
わう若さとプライドの絶望、人生の節目で味わう深い絶望に命が
危機にさらされながらもそれでも生き抜いてしまった作者の覚悟、
そしてどうにもならないものへの敬虔な思いが素直に著されてい
る。作者はそれを「ツキ」と呼んでいるが激しい内面世界を持つ
者がそこにいたるまでにはどれだけの深い絶望を受け入れて
きたことか、詳しい説明がなくとも文章の中から感じ取れてしまう
エッセイである。帯にもあるが次の文章がすべてを物語っている。
「人間は、見えない存在に畏敬の念ぐらい覚えてもいいだろう。」
「人生八十年、死もまた愉しからずや」
作家になる覚悟とはどのようなことかを教えてくれるエッセイである。
2006年1月25日 初版発行 本体価格 438円 全182ページ
「栄光一途」や「虚貌」などミステリー作品をおくりつづけてきた作者が
初めて挑戦した携帯サイト連載小説。マンドリンクラブに所属する大学
生の香恵が一人暮らしをしている部屋であるノートをみつける、どうやら
それは以前この部屋に住んでいた人のものらしいのだが、、、。アルバ
イト先の文具店に万年筆を買いにくる少し気になる人、デザイナーの石飛
さんも物語にからみ大団円へと向かっていく、心温まる物語である。心の
力を信じる気持ちを、雫井氏が衒いなく、亡き姉をしずかに思い作品に
仕上げたのだろう。万人に向ける携帯サイト小説という性格もありあまり
に毒がなく、NHKの連続ドラマ小説並みに健康で優等生的物語だが、
この作品に関しては雫井氏の静かな気持ちを尊重したい。雫井氏の
違った一面をうかがいしる角度の違う小説のひとつとして位置付けて
おきたい。
※余談ではあるが灰谷さんの「太陽の子」は大好きな小説の1つです。
2006年1月30日 初版発行 本体価格 1500円 全379ページ
遠藤氏が生涯追究していた理論と無意識、その無意識と宗教の
関係を描こうとした作品
宗教は混沌とした無意識からうまれる、ヨーロッパの理路整然
とした教義理論には東洋人の素朴な宗教観は相いれない、若き日
の遠藤氏の挫折も反映されているのだろう。カトリックにとらわれず
救いとは何かを作者なりに答えを求めた作品である。
学生描写の「焼き芋」や「学食のカレーライス」には閉口してしまった。
遠藤氏70代の長編小説。毎日芸術賞受賞作品。
1997年5月8日 第6刷発行 本体価格 563円 全373ページ
86年から93年まで複数雑誌に断片的に掲載された文芸評論集。
外国文学にも通じよく勉強しているが、逃げ道をつくるふざけた文
体が個人的に苦手である。小説理論の知識は豊富だが、それを糧
にふんぞり返った傲慢さが文章にすけてみえ、嫌悪をおぼえてしまう。
なぜこの知識を反映した作品を生み出せないのか、評論の前にそれ
に見合う小説を送りだしてほしい。深い問題意識がない小説家が陥る
傲慢な逃避の典型である。ただ知識を得る部分に絞れば本書は有効
である。
1993年8月3日 第3刷 定価1300
92年から94年まで国内外で講演した原稿を一冊にまとめた新書。
大江氏自身の
フットボール」にあることが明確にしるされており、「ヒロシマ・ノート」
以降世界的な視野として核を思想化
一冊である。穿った見方かもしれないが、ノーベル文学賞受賞の根回し
講演の一面も否定できないのでは・・・。大和魂を
ため、明治維新後は欧米諸国を模範にしたが、現在でもエ
欧米に開かれた日本を目指そうとしている。そこが大江氏の限界な
しれない。中上氏ならば混沌のアジアへ開いていったであろう。
小説知識
タイトルは川端氏の受賞講演「美し
1995年1月31日 第1版 620円 全232ページ
なにげなく生活に浸透している科学の落とし穴をわかりやすく説明した書。
万能薬の抗生物質が逆に薬物の効かない耐性菌をつくりあげてしまう
パラドクスな恐怖を身近な生活レベルで解説、身近すぎる分、余計に
恐怖を感じてしまう内容です。
生命工学、ネットワーク、核エネルギー、環境破壊の面から、利便性を
追求し続ける私達の生活に警鐘を鳴らしています。
とにかく読みやすい文庫なので通勤時間などちょっとした時間に読める
お手軽な一冊です。
1996年5月1日 第1刷 480円 全253ページ
2002年6月~2004年9月まで 週刊SPA!に連載されていた放談を
単行本にまとめたものです。タイムリーな話題を機軸に政治や音楽、
スポーツ他、お二方の知識を存分に味わうことの出来る放談集です。
もちろん文学に関してや文学賞選考委員会の裏側までふれられていま
す。私自身、坪内さんの書にふれたことがなかったのですかここまで
知識幅が広い方とは思いませんでした。視点の切り込みもかなり鋭い
方です。これを機にいくつかの著作に当たってみようと思います。
知を遊ぶ縦横無尽さに好奇心が引き出される単行本です。
2004年11月20日 初版第1刷 1800円 全576ページ
三島賞を受賞してまだ間もないころに「マガジンwooooo」に連載していた
時評を集めた書。「物書きは高尚な先生などではない、所詮みせもので
あるし、人でなしの稼業である」この精神が文章全編に貫かれている。
平和、平等、豊かさが逆に人間が持つ根源的な力を奪っていくその危機感
に抵抗していく現在日本へのアンチテーゼの時評かな。
その後、柳さんや大月さんなどに論争をしかけていく福田さんの気質がわ
かりやすく味わえる時評です。痛快でおもわずにんまりしてしまう本ですね。
1999年8月1日 第1刷 500円 全335ページ

森絵都 角川文庫







