こんなニュースを見つけた。
「奈良県御所市で、人助けのために公道の走行ができない重機を運転した男性が、
運転免許の取り消し処分となった」
男性は、高田さんと言う。
ある日、近隣の86歳の老人が高田さんに「助けて」と訴えて来た。
稲刈り途中に、コンバインのキャタピラーが切れて動かない…と。
故障したコンバインをショベルカーで引き上げてほしい…と。
高田さんはショベルカーで田んぼへ向かい、コンバインを引き上げた。
そのため、付近の道路を約1.5kmにわたりショベルカーで走行した。
この件で、髙田さんが大型特殊自動車の運転免許を持っていなかったため、
奈良県公安委員会は、2年間の運転免許取り消し処分を課した。
高田さんは、パワーショベルは「建設機械であり自動車ではない」と訴えた。
走行時も危険性が低く、免許取消処分は「裁量権の逸脱」だとして提訴した。
奈良地裁は、パワーショベルは大型特殊自動車にあたり無免許運転と判断。
高田さんは、建設業の仕事にも日常生活にも欠かせない運転免許を突然奪われた。
運転免許がないので仕事ができず、お客さんも離れていった。
ほとんど無収入の中で、貯蓄を切り崩して生活した。
免許を再取得するために、バスで片道1時間もかけて教習所に通い、
普通免許、さらに問題なく人助けするために大型特殊の免許もとった。
しかし「人助けをしたのに、なぜ?」という悔しい思いが募る。
苦しい生活の転落したことも相俟って、眠れない日も続いたという。
高田さんは、人が「助けて」と自分に求めてこられたら、
今でも、やっぱり素直に助けてあげるのが当然だと思っている。
高田さんは最高裁まで争ったが、結局裁判所の判断は変わらなかった。
確かに理屈は、大型特殊の免許なしで公道を走ったことは違反だろう。
そして違反は違反と、ネットでは高田さんに与しない考えをもつ人も居るようだ。
でもぼくは、このことは次の話によく似ていると思う。
「40㎞制限の公道で、41㎞出したら違反は違反だから、
罰金はとるし、免許の点数を引くのも当然だ。文句を言うのは筋違いだ」
コンプラ遵守が、まるで黄門様の印籠のように猛威を振るっている風潮の中で、
人助けすること・一肌脱ぐこと・やさしさを発揮することが、
このように、思いっきり裏目になることがあるという世の中だ。