今、カスタマーハラスメントが問題になっている。

これは飲食店などだけの問題ではなく、

サービス業・製造業・役所など、あらゆる業種に渡る。

 

どんな人にも「お客様は神様です」と言ってしまったら、

そりゃあ、カスハラする者が次々に出てくるのは当たり前だ。

ていねいに対応するのに値しないような人たちほど、のさばり出す。

店員や従業員が礼を尽くしても、客が礼節で応えるとは限らない。

 

出されたラーメンにこっそり異物を入れて、

「どうしてくれるんだ!」と凄む輩は昔からいた。

でもそれはその道のプロがした。脅すことによって、日銭を稼いだ。

 

しかし、今はふつうの人間・素人がする。

中でもたちが悪いのは、自分は正当な抗議活動をしていると信じている人だ。

「正義」を実行しているのだから、やめる理由はない。

 

が、カスハラのグレーゾーンの中には、正当性や教育性があることもある。

客の厳しい指摘やクレームには、店や企業を高める可能性もあるだろう。

だから、それらを完全に”粛清”し”一掃”してしまうのもまた問題があろう。

 

ひと昔前は、生産力が低いので物が少なく、

商品を先に所有している生産者や店の立場が強かった。

気に食わない客がいたら、売らなければそれで済んだ。

 

ところが、生産力が高まり売り切れないほど物があり余っている時代では、

客は商品やサービスを好き勝手に選べるようになり、消費者の立場が強くなった。

生産者や店はなんとか買ってもらうために、消費者にこびへつらう様になった。

 

だから、カスハラ人間がはびこるようになってきたのは、

ある意味、経済発展の当然の成り行きという面もあるだろう。 

 

カスハラが欧米に少なく日本に多いのは、

自分の身を削ってまでも顧客に尽くす、江戸時代以来の商人道の影響もあるだろう。

また、日本人が伝統的の持っている”謙譲の美徳”の影響も強いだろう。

 

そのうちカスハラ対策が効果を上げ、全国的に功を奏するようになれば、

今度は逆に、セルハラ(seller harassment)が問題となってくるだろう。

不愛想で気の利かない店員、”売ってやらんかな”と言わんばかりの店・生産者…。

 

だからカスハラとセルハラは、シーソーの両端の関係に似ている。

その時々・時代によって、コインの裏表も変わってくる。

何事にもどっちかに振れ過ぎて、行き過ぎてしまうのが日本だ。

 

そのうち、多くの店や企業が寿司屋の名店みたいになって、

客の方が店主や職人に気を遣い、食べ方まで粋な振る舞いを暗に強いられ、

最後は、目のとび出るようなお代を払うハメになるかもしれない (^_-)-☆