コラムニストの山本夏彦氏(故人)の名言、
「何用あって月世界へ」が妙に心に引かかっていた。
この言はまさに夏彦氏の真骨頂で、本のタイトルにもなっている。
が、あったはずのその本が見当たらない。
だから、彼の言わんとする正確な意図は分からないが、
なんとなく分かる気がする。
実際に、人間がお月様の土を踏んだところで何になる?
そんなことより、中秋の名月を愛でる方がはるかに心安らぐ。
「月では兎が餅をついている…」と子どもに語る方が、良い情操教育になる。
月を”物”として見、科学の力で実際にお出かけし到達したところで、
アームストロング船長が見た実際の月の景色は、ただの砂漠だった。
彼が帰りに目にした地球の姿の方が、はるかに美しく感動的だったと…。
月面着陸は1969年7月20日で、早いもので、その時からもう50年以上経っている。
で、人類の着陸成就のその後、何がハッピーになったというのか?
地球世界に、どんな豊かさや進歩をもたらしたというのか?
それどころか、今地球上ではウクライナでパレスチナで、
まるで過去の世界大戦の時と同じような、血生臭い殺し合いが続いている。
世界は進歩するどころか、退歩している。
宇宙に関する科学技術だってどうだ?
どれだけの成長・進展があったというのか?
アメリカが6回着陸し12人の人間が月に降り立ったが、
その後に続く国は1つもない。
当のアメリカも、アポロ計画自体をストップしてしまった。
アポロ13号が、乗組員もろとも空中で爆破してしまった大失敗があったからだ。
世界一豊かなアメリカでも、もうアポロ計画を進める金が無くなってきたからだ。
そしてアメリカ人はもう、月着陸に夢や情熱を持たなくなってきたからだ。
夏彦氏があの丸い顔で「それ見たことか!」と、高笑いしている様が目に浮かぶ。