日本のサラリーマンは、いまだに終身雇用への幻想が高い。

日々の業務に疲れ果て、自分がそこに居ることに疑問を感じ、

いたたまれなくなって「転職したい」という気持ちが起こっても、

我慢してあきらめ、踏みとどまる人がほとんどだろう。

つまり、基本的に”変化”を嫌い、”変化”することを怖れている。

 

これは日本人にとっては、ある意味本能的にいたし方ないところもある。

なぜって、日本人のほとんどは農耕民族の血を受け継いでいるからだ。

米作りの一番の敵は”変化”、即ち天候の異変・自然災害だ。

天候や自然が変化しちゃったら、米は取れない。

貧しく豊かでなかった頃の農民には、それは死を意味する。

 

また、江戸時代以来の商家のお勤め方も、身についちゃっているかな。

そう、丁稚奉公・年季奉公だ。

1年中ほとんど休みはなく、給金も出なかった。

帰省できるのは正月やお盆の時だけ。しかも長居はできなかった。

10年間我慢しやっと”手代”になっても、わずかな給金しかもらえなかった。

 

そんな艱難辛苦を経た後でやっと番頭となり、

晴れて”のれん分け”してもらう人間は、

三井家では、なんと300人に1人でしかなかったという。

おまけに、長い間滅私奉公をしなければならないので、

婚期を逃し、独身のままでいた者が多かったとか。

 

今の日本で、その生き写しのような例もある。

有名シェフ・パティシエの下で「修行」する若者たちだ。

「いつかボスのようになって、自分の店を開きたい…」と叶わぬ夢を抱き、

残業代が全く出ないのに、体を酷使して深夜まで働き続ける。

これを人は、”やりがい搾取”と呼んだ。

 

でも、笑ってはいられない。

日本の勤労者たちは、多かれ少なかれ、このようなマインドを今でも持っている。

しかもサラリーマンは、”のれん分け”で自分の会社を持つことはできない。

なのに、1つの会社にずっと滅私奉公する義理はあるの?

やりがいがあると思って努力しても、やがて使い捨てにされるだけだよ。

 

ひと昔前までは、転職すると再就職先がなかった。

あっても、どんどん条件は悪くなった。

だから、”石の上にも3年”のことわざも生きていた。

今では、そのマインドのせいで転職が少ないことが、

日本の賃金が上がらない大きな要因となっている。

 

みんなで赤信号を渡れば怖くない。

みんなでどんどん転職を繰り返し、渡り鳥の様に生活すれば、

これからの日本の給与は、きっと上がっていくことだろう。

高齢化・少子化に伴って、人材不足が叫ばれている今がチャンスだ!

悪い・イヤな経営者に袖を振り、ブラック企業を一掃しよう!