■短評
週末割引レンタル199円。今年春から九州に行っている息子くんが、旅立つ前に今作公開記念で過去作がテレビでロードショーされているとき、嬉しそうに観ていた。今、帰省しているので一緒に鑑賞。
■あらすじ(アマプラ紹介文より)
人気シリーズ待望の第5作。ハリソン・フォード演じる伝説の考古学者インディ・ジョーンズが、世界を股にかけた最後の冒険に出る!
■総評
1作目は1981年。なんと40年以上も前だ。ハリソン・フォードも80歳を越え、ボケ始めていてもおかしくないご年齢。
過去シリーズについては、一体どうやって撮影したのか分からない、今までに見たこともないような新しい映像や展開、特撮が大きな醍醐味だった。このシリーズが他に与えた影響というのも大きかったと思う。
気持ち悪い虫だらけの洞窟、トロッコレース、ゴロゴロ転がってくる巨大な丸い石からの逃亡、精霊?悪霊?が飛び交うシーンなど・・。当時の少年たちは、初めて見る映像に心を躍らせた。僕たちは、インディと一緒に想像を超える世界を冒険していた。
そして今。ハリソン・フォードもおじいちゃんになり、自らが身体を張ったアクションはできなくなったが、映像効果や特撮などCGでどうとでもなるような時代を迎えてしまった。
もちろん、本作の映像が過去作や、現代のそれらに劣るようなものでは全くない。技術の進化によって過去作は当然のように飛び越え、現代の他のアクション活劇映画と比して恥じる必要はない。
しかし繰り返しになるが、インディ・ジョーンズはもちろん、ジョージ・ルーカスやスピルバーグでなくても、観客を充分驚かせ、興奮させるシーンを作ることができる時代。むしろそれは当たり前となり、今の観客はそれだけでは満足しなくもなってしまった。奇しくもそれを強く感じたのが、スピルバーグが製作を担当した本作であるというのが何とも言えない。
映像に更なるプラスアルファの驚き要素があったり、本質である物語・シナリオに加えて、俳優の演技が優れていなければ、「よくある見た目と話題性主体の映画」で終わってしまう。
これだけ技術が発展した現在。擬似体験は2Dから3Dに、そしてその先・・そうだ、観ているだけでなく観客が積極的に参加できるようになったら?人によって違った物語が展開したらもっと面白そうじゃない?・・・。そう、それは既に実現されている。
世間ではそれを「ゲーム」という。CGは、映画よりもむしろゲームの世界で発展し、最近では実写と見分けのつかないオープンワールドまで実現している。
これらの進歩は、映画本来の立ち位置を改めて指し示しているのかもしれない。映画は決して遊園地の乗り物でも、大きな画面でプレイするゲームでもないのだ。
ストーリー、脚本、そして「本物の」俳優の演技。これらが改めて評価基準としての重要性を高めていくだろう。アクションなんてできないおじいちゃんの、CGでごまかされたアクション映画なんて本物じゃないのだ。それだったらゲームで良い。
なぜ「イップ・マン」が時代遅れなカンフー映画で大したシナリオでもないのに人気を博したか?ドニー・イェンが本物のカンフーができたからだ。
なぜ無名の俳優しか出ていなくて絵面も地味な「ソウ」が大ヒットしたか?類を見ないシナリオと衝撃のラストが用意されていたからだ。
皮肉にも、80歳を過ぎたハリソン・フォードと、もう出ないと思われていたこの人気シリーズ5作目は、そのことを強く感じさせるきっかけになってしまった。
確かに本作は、僕を含めた往年のファンを懐かしい気持ちにさせることはできたと思う。
でも今度こそ、ありがとうインディ・ジョーンズ。そしてさようなら。と言いたい。
インディ・ジョーンズの世界は、今は立派に「ゲーム」が引き継き、発展させている。
一方、俳優/ハリソン・フォードには、年齢相応の役割がきっとまだまだ待っている。少し前の作品だが、「42 〜世界を変えた男〜」の役柄ではシブくてシビれた。ゲームじゃできない体験が、映画には、俳優の演じる力にはあると信じている。彼の息子くらいの年齢の僕が言うのもおこがましいが、今後もどんどん活躍して欲しい。CGで若返らなくても、リアルに年相応な役でいいじゃないか。「映画」は、まだまだ彼を必要としている。
来年には、アラフィフからアラカンに踏み出す年齢を迎えた、僕の個人的な願いでもあったり。