私の実家には椿の鉢植えが四つあります
この椿達は、私が7歳の時に父が母の為に買って来た鉢植えでした
なぜ覚えているかといいますと
私が小学校の入学式の時に実家の玄関前に置いてあったからです
それから母はご近所の人達と話しながら毎日椿のお世話をしていました
蕾が付けばご近所の人達と喜び、花が咲きましたら、花が咲いたねと皆で実家の前で話していました
私の母は 、ご近所では毎日子供の為によく尽くす優しい母親という設定でしたので、外ではいつもニコニコ顔をしていました
ただ、椿への愛情は本当だったと思います
凄く大切に育てていましたから
…
10年前、父が亡くなり母の認知症も進み施設に入院
それからは毎月私は実家には
帰っていますが、椿のお世話は親戚の叔母にお願いをしていました
椿の葉は深い緑色で艶々しています
実家へ帰る度、いつも椿の木達は私を出迎えてくれていました
ところが昨年夏
急に4本共椿の木の葉の色が黄緑色に変わり、春に咲く蕾が殆ど付かなくなっていたのです
55年間こんな事は無く、初めての出来事でした
つまり、椿の木は枯れ始めていたのです
調べましたら細菌による根腐れが原因ですが、椿は母の死を知っていたのでしょう
主の死を知り、椿達もその生涯を終えようとしているのだと私は感じました
何故かといいますと、以前私の実家の坪庭には大きな沈丁花の木がありました
毎年春に柔らかな甘い香りのお花を咲かせ、春に実家に帰る時は香りを楽しむ事が出来ました
父も毎年ぐんぐん伸びて大きくなる沈丁花の木が育つのを楽しみにしていました
所が父は10年前の12月に倒れましたが、その年の2月に沈丁花が枯れ始めたのです
そして4月に花を咲かす事はありませんでした
本当にいきなりの事でしたので私は驚きました
お父さん、沈丁花が枯れてるよ
お父さんに何かがあるのかも知れない
私は嫌な予感がしましたので、確かそんな風な事を話したと思います
もう10年前の事ですので、私の記憶もはっきりしていませんが、父が倒れました時、沈丁花はこの事を知っていたのだと思いました
…
木にも心があります
そして、庭木や鉢植え達は誰がご主人様か知っているのでしょうね
全ての庭木や鉢植えがそうだとはいえませんが、ご主人様か亡くなる事を予知する木(植物)がある事は確かだと思いました