受けとりました時、早く箱を開けてごらんと父に急かされ、急いで箱を開けた事を思い出します
箱の中には金色の時計が入っていました
父は、「九美子この時計は一生持てるんだよ
壊れても何十年経ってもきちんと責任を持って直してくれるメーカーの時計なんだ
大切にしなさい そしてお前が使わなくなったら、いつか生まれるお前の子供に託しなさい」
そう言って優しく微笑んでくれていた父
あの日から約38年、この時計と私は殆ど毎日一緒に過ごして来ました
その間、一度も壊れる事無く毎日秒を刻んでくれていました
でも、時計も生きています
時計の中の部品は劣化し、表面は傷だらけです
オーバーホールをしないといけない事は分かっていましたが、期間が約二ヶ月前後かかるので、その間時計と離ればなれになるのが辛く中々出せないでいました
でも、人間にも健康診断がある様に
時計にも健康診断が必要だと認識し、思いきってメーカーに出しました
車にもバイクにも時計にも、私は心があると思います
人間が作った物ですが、大切に思う気持ちを持ち続けますと、必ずその気持ちに答えてくれます
愛用品という言葉がありますね
愛を用いる品
愛する品
その品物が急に無くなりますと、心細く不安になります
それは、やはり自分と心通わせる品であるからでしょうね
私は物を大切にします
流行は追いません
それは、そのひとつの品で満足感を得れるからです
でも、ひとつでは満足出来ず、いくつも物を欲しがる人は、一生欲しい物を追い求め、不要な物がどんどん増えるのです
まさに私の母親がそうでした
…
父は、私が質素を好み物を大切にする子だと分かってくれていました
だから私が大人の仲間入りをした日に、一生使える価値のある物をプレゼントしてくれたのだと思いました
シンプルではありますが、父の愛情がこもった腕時計
これからも、毎日一緒に時を過ごしていきます
私がいつかいなくなる日に
この時計は我が子に託したいと思います
