昔、パン焼きを教わりに伊賀までゆうげん先生(楽健寺酵母の創始者の先生です。)を訪ねた時、先生が、私に教えてくださったのはパン焼きのテクニックではなく、ただ一つ「笑顔でやりなさいよ」でした。
パンを上手く焼くためのテクニカルな知識(つまりは単なる情報)を取りに行こうとしていた私はずっこけそうになったのを覚えています。
「そんなこと知ってるし、精神論でしょ?」
などと、生意気にも私は思ったわけです。

でも、その後、人生の色んなことがありながらもパン焼きを続けていく中で、あの時先生が、おっしゃったことの本当の意味がわかって行きました。
本当に気づいた時は涙がとまりませんでした。
笑顔で向き合う。
良い気持ちで寄り添う。
そのようにしていくと
酵母の声も聞こえてくる。
コミュニケーションのはじまりです。
そのうち、酵母が助けてくれていることに気づき出す。
(それは今まで自分が上手くコントロールして上手くパンを焼いてやろうと思っていた人ほど、
びっくりするのだけど。)
酵母に寄り添うと酵母がいつもいつも私に寄り添って支えてくれていたことに気付いていきます。
共通の言葉をもたなくても
愛でつながりあっていることに気づいていきます。
それは、きっと気づく前から当たり前にそこにあったのだけど、
自分で上手くコントロールして上手くパンを焼いてやろうと思っていると目が曇って気づけないのだね。
そうして酵母とのコミュニケーションを続けていくと、視野がまた広がって(荒い世界から微細な世界へ、目の見え方がかわります。)
道端に咲いている小さなお花や
鳥のさえずりや
新緑が風でそよそよする姿や
つちの匂いや
雨の音
太陽の暖かさ
夫や子供達の笑顔
友人や仲間の優しさ
出会いの絶妙なタイミング
などなど
一つ一つに深い歓びを感じるようになりました。
全体の中で生かされていることをかんじます。

「パンを上手く焼いてやろう」
から
「酵母菌の力、素材の力、地球の力に助けて貰って、私もそこに参加させてもらって一緒にパンを焼こう」
にかわるんです。
感謝にかわる。
オーガニックの素材がそりゃあ良いけれど
オーガニックでない素材にも
今目の前に来てくれた素材に感謝するようになりました。


基本のこねこね会の始めに必ず皆様にお伝えしていることがこの「笑顔で作ろう」です。
これが初めの第一歩。
そして、
酵母に触れるとき
生地に向き合うときは
謙虚でありたいです。
私はそのように気をつけています。

私たちはそもそも微細な微細な振動数であり、
自分が発する言葉にも振動数があるのだから。
他を否定したり、裁いたり、正義で戦うのではなく、違いもただ認めあえるといいなと思います。
その思いで
生地や酵母に触れていけたら
パン焼きはますます楽しくなる。
パン焼きを切り口にもっともっと世界の美しさに気づくようになると思います。
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