今ここに子育てにおいて模範的な母親と、先天的な障害等のない健康な子供という母子のモデルケースをご紹介したいと思います。

 

 その子供は常に母親に見守られています。見守られている安心感があるからこそ、母親の側を離れて自由に外界を探求したり何か遊びに熱中したりすることができます。

 

 そして自分が何か不安になった時には、いつでも見守ってくれている母親の側に行くことができます。そして母親に適切に気持ちを落ち着けてもらうことができるのです。

 

 子供はそうした経験を積み重ねることによって母親を自分の「安全基地」だと認識するのです。

 

 母親を「安全基地」と認識した子供は、さらに安心して世界を探究することに積極的になれます。常に自分の視界に入るところに母親がいないと遊びに熱中できなかった子供が、だんだんと母親の側を離れて遊ぶようになるかもしれません。そしてますます積極的に冒険し、時には危なっかしいこともやってしまうでしょう。でも恐怖や不安を感じればすぐまた母親の側に戻って気持ちを落ち着けてもらえるのです。

 

 

 

 こうしてこの子供は、母親の元での安全とそこから離れる探究とのバランスを上手にとっていける子供に育つのです。

 

 この子供は安心、安全であるという実感を得るのに、やがて母親という実際の存在を必要としなくなります。母親と自分との関係性がその心の中に取り込まれ、母親が存在しなくても自分はいつも安心、安全であるという実感がもてるようになるのです。これが「心の安全基地」です。

 

 こういう理想的な親子によって作られた愛着は、安心型 または 安定型 と呼ばれます。(※実際には幼少期の愛着と成人になって定着した愛着では別々の呼び方をするのですが、ここでは簡単に統一して述べたいと思います。)

 

 最初にざっくりと模範的な母親と申しましたけれど、もう少し具体的にどのように乳幼児と関わるのが理想的なのかを補足したいと思います。

 

 まず、

 

 子どもが泣いたらすぐに抱き上げるなど、子どもの状態に素早く反応することが大事です。泣いているのを放置したりすると、子供は母親を安心基地であると認識することができず、健康な愛着は育ちません。

 

 そして、子どものリズムに合わせるように対応することも大事です。例えば、抱き上げた子どもが泣き止んで、また探究の方に関心を持ち始める様子を見せたら、すぐに子どもを下ろして自由にさせることが大事です。子供が夢中になって遊んでいるのに無理に抱き上げたりするなど、母親自身の欲求を子どもに押し付けるようなことはしてはいけません。

 

 また、感情面でも子どもの様々な感情に幅広く対応することが大事です。子供が怒っているときや悲しんでいるときでさえも、それを受容することが大事です。決して「怒ってはいけません」などと言って抑圧させてはいけません。むしろ子供が安心して、積極的に自分の気持ちや考えを表現するようになるように促すことが大事です。子供が抱えている口では言い表せない感情を察して「怒っちゃったんだね?」とか、「悲しいのね?」などと理解を示し感情の自覚を促すことが大事です。子供にとってどのような感情でもちゃんと母親に受け入れられるという実感が大事なのです。

 

 こういう母親の模範的な子育ての態度が即ち「無条件の愛」です。子供は母親にありのままを受け入れられ、無条件に愛されてこそ、「私は無条件に愛されるのだ」という確信を得ることができます。これが 健全な自己愛(セルフラブ)の萌芽となります。

 

 子供の心の中でこの母親と子供(インナーチャイルド)は調和し、安定した内的ワーキングモデルを作ります。そしてこの内的ワーキングモデルをベースとして、この子供は将来、他者を自分の母親(無条件に愛する者)のように思い、または自分がその母親のようになって他者を我が子(無条件に愛される者)のように接することができるようになるのです。

 

 私今和泉が初めて出会った愛着安定型の人物のことをこれまでに記事に書きました。愛着安定型の人がどれほど他者から愛されるのか、あるいは他者を愛することができるのか、とてもよくわかる事例となっています。そして、当時まだ不安定な愛着を抱えていた私(今和泉)自身が、その不安定な愛着ゆえに歪んだ認知のもとで彼がどのように見えていたかということについても注目して見ていただきたいと思います。とても思い入れのある記事ですので、(ちょっとふざけてますけれど)宜しかったらお読みください。全6回シリーズです。

 

https://ameblo.jp/hinata-imaizumi/entry-12648266618.html

 

 今日は理想的な愛着のモデルケース、そしてそれによる心の安全基地の獲得と健全な自己愛の芽生えについて述べました。これはあくまでも理想的なモデルケースであって、実際にはほとんどこういう人はいません。次回は問題のある養育を受けた子供がどのような愛着を抱え、どのような性格の子供になるかということをお話ししてみたいと思います。

 

(続く)