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アレックスが「カーサの息子」とわかった日の翌日、ちょっとした奇跡が起こりました。驚くことに朝のセッションで、アレックスがアンカーミディアムの席に「本当に」座っていたのです!

 

 

後でアレックスにどういうことなのか聞くと、セッション直前にジョアンさんがふらっと現れ「君は今日のセッションでアンカーの席に座りなさい」と言われたそうなのです。(もちろんそういう時のジョアンさんにはエンチダージが入っています。)

 

 

つまり、まるでエンチダージが前日の話を聞いていたかのように(本当に聞いているのですが)アレックスが正真正銘のカーサの息子であることを証明してみせたのです。昨日、森先生はこのビジョンを見て「君はカーサの息子なの?」と聞いたのです。

 

そしてそれはたった一人の肉親を亡くしたばかりのアレックスへ、エンチダージからの激励です。「ここは君の家なんだよ。君が帰ってくる場所なんだ。私たちはみんな君の家族。みんなが君を応援しているよ。」と。

 

私たちにとってはこういうことは奇跡のように目に映ります。でもアレックス(森先生もそうですけど)にとっては日常茶飯事なのです。

 

アレックスは普段エンチダージへの「手紙」を書いてポストに入れておくそうです。カーサにいる間は日記のようにほとんど毎日。

 

カーサの事務局

 

ポストというのはカーサ事務局の前にあるもので、本来手術を受けた人が24時間経過後に自分の住所とポウザウダの住所、手術を受けた日時等を書いて入れておくためのものです。

 

事務局前のポスト

 

アレックスからの手紙にエンチダージへの質問や呼びかけなどがあると、後日ジョアンさんがふらっと姿を見せてアレックスに返答があるそうです。(これは彼独自の方法でカーサ非公式のものです。お願い事などは祈りの三角形のところに提出するのが決まりです。)

 

そういう時のジョアンさんも、もちろんエンチダージ(が入った状態)です。だって、手紙はドイツ語なのですから。(普段のジョアンさんはポルトガル語しか話せないうえ、字の読み書きができません。ましてやドイツ語どころか英語すら理解しないので、手紙を読むはずがないのです。)

 

注)余談ですが、目に見えない存在としてのエンチダージの公用語は英語とポルトガル語です。我々が写真提出サービスの時にお願い事を英語で提出するのはそのためです。それでもエンチダージからまるでドイツ語の手紙を読んでくれたかのようなレスポンスがあるのは、エンチダージは手紙を書いた時の彼の純粋な意図を理解しているからです。

 

そうやって彼はエンチダージと常に対話し、共に生きているのです。

奇跡が日常なのです。

 

私は滞在を伸ばし、アレックスがドイツに帰国するのを見送ることにしました。ツアーメンバー達と森先生が帰国した後も、「カーサの息子アレックス」と毎日一緒に過ごし、いろんな話をすることができました。

 

そして彼の帰国の前日、私たちは一緒にカーサの滝に行きました。

 

展望台からの風景。滝はこの小道の先の谷間にあります。

 

ゲート前ですぐにアルメイダ先生の化身と言われる青い蝶、希少種のブルーモルフォ蝶がお出迎えです。でもアレックスは何か思いつめた様子で全く蝶に気が付きません(笑)

 

彼はその日まで半年にも及ぶカーサ滞在でした。きっとそれまでよりもずっと特別な滞在となったことでしょう。この間に彼はどれほど大きく成長したことでしょうか。そしてどんな思いで最後の滝に訪れたのでしょうか。

 

 

ゲート奥の脱衣用ベンチで服を脱ぎ、滝までの小道を歩いているとき、また青い蝶が現れました。

 

その蝶はアレックスに「見てー、気付いてー!!」とばかりに付きまとい、彼の右に左に、前に後ろにと飛び回ります。それでも彼は全然気が付きません(笑) せっかくアルメイダ先生がお別れの挨拶に訪れているのに!!

 

滝の前で彼は必死にお祈りを始めました。

いつもより長い長ーいお祈りです。

 

その間もずっと青い蝶が彼の周りをぶんぶん飛び回りますが、

彼はそれでも全―――――――っ然気が付きません(大笑)

私は笑いを堪(こら)えるのに必死でした。

 

いよいよ入滝が始まると、青い蝶は水を避けて近くの木陰に逃げていってしまいました。

 

キラキラと木漏れ日を浴びながら真剣な面持ちで水しぶきをあげる彼の入滝姿に、

「アレックスらしいや…」と、私は泣き笑いが止みませんでした。