クロキリスタジアムの限界が浮き彫りに──だからこそ「宮崎国際競技場」が必要だ
2025年7月21日、J3テゲバジャーロ宮崎が都城市山之口町のクロキリスタジアム(県山之口陸上競技場)で公式戦を初開催した。この歴史的な試合は、クラブ史上最多の観客数である8,032人を動員し、大いに盛り上がった。しかしその一方で、このスタジアムの構造的な限界と、宮崎県が今後抱える「スポーツインフラの本質的課題」が明確に浮かび上がったことも否定できない。
1. 知名度や集客能力の悪さ――チケットほぼ完売でも8,000人が意味するもの
山之口陸上競技場(クロキリスタジアム)は、本来このような大規模試合を想定して設計された施設ではない。
試合前の段階では、チケットはほぼ完売状態となり、関係者は1万人近い来場者を見込んでいた。実際、クラブ史上最多となる8,032人が来場したことは称賛に値するが、逆に言えば「約2,000人分のチケット購入希望者が来場を断念した可能性」を示している。
なぜ1万人は来なかったのか?
• 駐車場が不足し、遠方からの自家用車利用に限界があった
• 公共交通機関でのアクセスが極端に不便
• 山之口町という地理条件から、周辺宿泊・商業施設のキャパが限定的
• 小さな子ども連れ、高齢者層が“暑さ・移動”のリスクから断念
つまり、「来たくても来られなかった人」が存在していた。
これは、“立地・収容力・アクセス性”の限界による経済損失である。
雨天時や猛暑時にはどうなっていたか──。今回は幸い天候に恵まれたが、全天候型の設備がない現状では“運頼み”の運用に過ぎない。
2. 交通アクセスの重大な課題――山之口では限界がある
山之口町は静かな農村地帯であり、公共交通の整備も限定的である。最寄りのJR山之口駅から会場までのアクセスは遠く、公共交通機関での来場は非常に困難。多くの来場者が自家用車に依存せざるを得ず、駐車場の逼迫・渋滞が深刻化した。加えて、歩道の整備やシャトルバスの運用計画も不十分で、高齢者・家族連れには極めて厳しい環境だった。
「交通で来場者をふるいにかける」ような設計では、未来のプロスポーツは成立しない。
3. 周辺環境とサービスインフラの脆弱性
トイレの数、飲食スペースの不足、日よけのない観客席──。これらはすべて、“競技場”ではなく“陸上練習場”レベルの設計であることの証左である。観戦という体験価値の向上が求められる中、今回のような「観客数の爆発」が生んだサービス崩壊は、施設側の構造的限界を如実に物語っていた。
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宮崎国際競技場こそ、今この県に必要な未来インフラである
これらの課題は一時的なものではない。宮崎県が「プロスポーツを興行として定着させる」未来を描くなら、オリンピック規格の競技場=“宮崎国際競技場”の建設は不可避の選択肢である。
その候補地は、宮崎市木花の県総合運動公園内。すでにサンマリンスタジアムや武道館が並ぶ好立地で、宮崎空港から車で10分・JR日南線による輸送も強化可能。ここなら、最大40,000〜50,000人を収容するスタジアム建設が現実的に可能であり、全天候型屋根・VIPルーム・国際メディアセンター・インバウンド対応施設などを兼ね備えた、真の国際競技対応施設が生まれる。
また、FIFAおよびワールドラグビーの公認基準も満たす設計とすれば、陸上競技だけでなくサッカーやラグビーの公式国際試合も開催可能となり、世界中からの誘致も視野に入ってくる。
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テゲバジャーロの未来も、この競技場に懸かっている
Jリーグはスタジアム基準に厳格である。J2昇格、J1昇格を視野に入れるなら、クラブ単体ではなく自治体と連携してインフラを整備する覚悟が必要だ。
クロキリスタジアムは、温かい支援の場ではあっても、Jリーグ・インバウンド・スポーツツーリズム時代の主力にはなりえない。
テゲバの未来、そして太陽県・宮崎のスポーツ経済圏の未来は、木花にある。
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「ひかげ」から「太陽」へ――今こそ、宮崎に真のスタジアムを
宮崎は「日本のひかげ」と呼ばれる地域だ。
だが今、我々は「日本国太陽県」として、世界に向けて走り出すタイミングにある。
クロキリスタジアムの限界を見届けた今だからこそ、宮崎は決断すべきだ。次世代のアスリートたちが、フェニックスの風に吹かれながら走る場所を。地元の子どもたちが、国際大会に憧れを抱く場所を。そして世界が、宮崎という名を知るきっかけとなる場所を。
それが「宮崎国際競技場」である。
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※この記事は、2025年7月21日の公式戦における現地報道・交通状況・施設評価に基づいて構成されています。